このレビューはネタバレを含みます
フランチシェク・ヴラーチル監督作品。
「チェコ映画史上最高傑作」「緻密、大胆、崇高、獰猛なエネルギーに満ちた『フィルム=オペラ』」(https://marketalazarovajp.com/)と呼ぶに相応しい凄い作品でした。
まさに神話。本作はプロローグで「偶然」つくられたとされている。だが、神が世界を創造したように、全てが必然的にカメラで記録されている。そこではもはや言葉は失効し、リテラルに映像イメージ、音声イメージをみることを余儀なくされる。
キリスト教と異教、人間性と獣性、愛と暴力。それらは峻別できず、容易に他方へ転化しうる。修道女になるはずだったマルケータは敵対勢力で獣のようなミコラーシュに拉致され、陵辱される。それは処女性の喪失という圧倒的な暴力なのだが、愛が芽生えてしまう。
これ以上、何事かを述べても言葉が無意味になるだけだ。本作のエネルギーを浴びよ。
補稿
エネルギーの源泉の一つにショットの崇高さがある。カメラは馬に乗ったり、女の下に潜り込んだりと縦横無尽に駆け巡る。そして生き物や自然、歴史ーそれが衣装や建築物、場所の美しさに滲み出ているーにも眼差しは開かれていて凄まじい。はじめてみるようなショットの連続でとても驚いた。