ノストロモ

マルケータ・ラザロヴァーのノストロモのレビュー・感想・評価

マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)
4.2
60年代のチェコ映画。東京・下高井戸シネマでの再上映時に観賞。
13世紀のボヘミア王国。王に派遣された軍隊や野良盗賊の一団が争う土地の領主の娘マルケータは、諍いの混沌の中で盗賊の息子ミコラーシュに拉致され陵辱されるが、いつしか彼に恋するようになっていく。
画面は全編めちゃくちゃ綺麗にレストアされていて、どの場面もはっとするように美しい。60年代の映画とは思えないし、また難解と言われているので身構えていた粗筋も、想像していたよりずっと分かりやすかった。永遠のように繰り返される争いの中で、無知故に無垢であり、ただただ父の人形、または修道女予備軍として自らの意志を持たなかったマルケータ。しかし過酷な運命によって血と泥の中に放り込まれた彼女は、文字通り身も心もどんどんボロボロになっていくが引き換えに自主性を獲得し、最終的には神とすら決別する。
古い映画に宿るこの、妙な説得力って何なのか?本作も冷静に考えれば荒唐無稽で極端な場面は多々あるが、そんなもの問答無用でねじ伏せていくあの独特の力を存分に感じた。間違いなく見る価値のある異形の傑作。
そして半世紀以上も前のこんな作品を、2022年の日本に届けてくれた関係各位に深く感謝したい。
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