もものけ

アドミッション 親たちの入学試験のもものけのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

完璧じゃなくてもいいじゃない、未来を決めるのは自分なのだから……。

彼氏に仕事に順風満帆なポーシャは子供嫌いなのに、名門プリンストン大学の入学担当官の仕事に生き甲斐を感じるミドルウーマン。
上司の引退から湧いて出た出世のチャンスを逃すまいと、地元の田舎町に新設された学校へ大学の同期からプロモーションに訪れて欲しいと懇願され向かうのだが、そこにはポーシャの息子が在学してると聞かされ、困惑するのだった…。


感想。
"Admission"とは〜を許可すること、大学の入学申請機関のセクションを舞台に描いたコメディドラマですが、邦題サブタイトル「親たちの入学試験」とあり、その親たちの出来事をテーマにしたお話を想像しましたが、入学担当官ポーシャの仕事ぶりを背景に、子育てを描いた作品であり、邦題サブタイトルは全く違う印象になる配給会社の失敗タイトルです。
ポスターもラブロマンスを象徴するような絵なので、これまた違う印象になってしまいます。
タイトルの意味が深すぎて、直感で伝わらないってことですけど。

この作品には、学歴社会への反感やネームバリューだけで大学を選び、学問への探究心ない学生の中で、育ちが貧困でも才能溢れる人材はあり、その出仕に差があれど持っている才能を見つけ出し導くには親の愛情が必要であるというメッセージを、子供嫌いなポーシャが息子の存在を感じ、母性に目覚める過程で葛藤する姿として描く、コメディよりドラマ性の強い作品でした。
印象的だったのは、息子の小論文を読み、里子に出した息子の寂しい環境から産まれた才能を想い涙するシーンで、冒頭での入学願書を対話的に描いたシーンの対比として、事務的な文字との対話から親の気持ちとしての対話への変化を表現しており、泣かせてくれます。
そしてコメディ映画お決まりの、泣かせて笑わせる演出で、毎回元カレが登場して、ジワジワ笑いを誘います(笑)

息子役のナット・ウルフのイケメン演技が、このシーンでは素晴らしく「キルチーム」でもその演技力から期待していましたが、実弟アレックス・ウルフも役者で、演技が似ていると思ったら兄弟だったのですね。
アレックス・ウルフは、オカルトホラー史上傑作「へレディタリー/継承」のピーター役で、その演技にも度肝を抜いた役者です。
ポーシャ役のティナ・フェイも美貌と演技力の高さが作品を盛り立てております。

プリンストン大学入学選考会で、様々な経歴の学生が次々と落第しますが、それらは優秀な成績と、活動の評価が審査ポイントであり、そこまで持っていても落第してしまいます。
ハーバード大学マイケル・サンデル教授著書「実力も運のうち」では、親の持つ資産で子供の将来は確定し、裕福な家庭に産まれる強運を持つこそが、才能であると説いていますが、まさに体現する演出は面白いです。

更に、油断してましたが、まさかの息子違いのオチでした。
この落とし所が上手く、ここから自分が選んだ道が、母親への抵抗という思いを分かち合い、自分よりも優秀な子供達の才能への未来を紙切れで評価する生活に嫌気を指し、向き合いながら新しい人生へ歩き始めるポーシャの成長と、里子に出した息子との対話への未来をエンディングとして展開させており、とてもドラマティックです。

アメリカ映画では、こうした新しい人生へやり直すシーンがよく描かれますが、これは失敗する人間を認め未来へのチャンスとしている国民性だからでしょうか。
日本では失敗は、終わりを表し、悪いレッテルを貼られてしまいますが、アメリカ映画の魅力とは、こういった未来への希望が作品に盛り込まれる国民性を象徴しているようで、とても大好きです。

非常に素晴らしい作品だったので、4点を付けさせていただきました!
もものけ

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