湯っ子

0.5ミリの湯っ子のレビュー・感想・評価

0.5ミリ(2014年製作の映画)
4.0
人たらしのヘルパー、サワ。
あるきっかけから宿無し・文無しとなり、生きていくために、時には脅迫までしながら押しかけ・住み込みヘルパーとなる。
サワちゃんは不思議な人だ。
図々しくて大胆で乱暴。
だけど、人間の様々なかたちにぴったりと寄り添える。それぞれひとりずつ違う、いびつな体、いびつな心に。
そして、素晴らしい介護技術と家事能力を持っている。鯵のみりん干しを手作りするんだもんな〜。

他のレビュワーさんもおっしゃっているように、3時間は長くて、私の恒例・寝落ちもしたのだけど、この映画のエピソードは全部削れないかなと思った。
どのエピソードに出てくる爺ちゃんも、おかしくて切なくて、かわいそうでかわいい。婆ちゃんも、その他のひとたちも。

カラオケで出会うシゲちゃんや、アホの坂田師匠…こんな感じのエピソードをいくつかつなげるだけで、ちょっと変わった癒し系映画になりそう。
津川雅彦演じる先生とのエピソードは、おもしろからはじまってほっこり、やがて哀しく…それだけで一本の映画にもなりそう。

だけど、やはり最初のエピソードが物語のきっかけになるわけだから、その周辺の決着をつけないといけない。
最後のエピソードは、私が感じていた違和感が明らかになる。この伏線回収には胸が締めつけられた。

高齢者の孤独、介護疲れ、引きこもり、貧困を描いてはいるが、社会に対して訴えている作風ではない。
彼らの存在が「ある」ということに、サワと同じく、ただ寄り添う姿勢を感じる。そこが好きだ。問題提起して憂うことしかしないよりも、ささやかだけど現実的に問題に向き合っていると思う。

サワ演じる安藤サクラの義父である柄本明の役どころなんか、酷いクソジジイだ。だけど、知らない人から見たら、貧乏で孤独な老人。そして、こうなったのも、それなりの理由があるらしい。
酷い奴だけど、サワは彼の存在まで全否定することはない。
この絶妙な距離感に、クソジジイの強張った心が少しだけ和らいだと思いたい。



芸術一家総動員の作品らしい。
サワを演じる安藤サクラが、義母とは静かでちょっとおかしさもあるバトル、義父とは命がけのバトルをするのが面白かった。
湯っ子

湯っ子