うにたべたい

拳銃と目玉焼のうにたべたいのレビュー・感想・評価

拳銃と目玉焼(2013年製作の映画)
4.8
自主制作の低予算映画。
脚本・監督の安田淳一が編集、撮影も行っていて、少人数でほぼ3年の月日をかけて作成されたそうです。
試写会で好評を得て、日本全国の主要都市で上映、各地で高い評価を得たという経歴をもった作品となります。
自主制作でそれほど有名でもないにも関わらず、私の家の近くのレンタル店でもDVDレンタルされていました。

主人公は新聞配達員をやっている中年男・志朗です。
端的に言えば、この中年男がヒーローとなって戦うことになる話なのですが、基本的に特撮シーンが無いのがよくあるヒーロー物との違いだと思います。
主人公は新聞配達員をやっている中年男で、エンドロールまでそれは変わりません。
特別な力も無いし、ケンカや武道の心得があるわけでもない、普通の気弱な中年男なんです。
プロテクターをネットショップで購入し、2つを組み合わせてラッカーで色を塗ったヘルメットをかぶった中年男です。
宇宙人もいない、悪の組織もない、改造手術もない、DYIの武器を持った中年男が主役の映画で、ミラクルパワーもビームもなく、対する相手も振り込め詐欺集団、守る対象も借金を抱えた彼氏つきの喫茶店のウエイトレスという、言ってしまえばしょぼい設定となっています。

超良かったです。
評判が良いので駄作ではないだろうと思いつつの視聴だったのですが、思った以上のできでした。
中年男が正義感に目覚める流れも自然で、テンポよくグダグダ感もないです。
序盤、どう考えても鬱エンドになりそうな展開になり、評判がいいけど禍根を残す系かと思ったのですが、大団円でキレイに終わったのも良かった。
最後、調子に乗った志朗が、ハーレーに乗って現れたシーンは笑いました。

結局、悪が滅んだわけでもないし、借金を作った理由はともかくも定職につけないパチンカーという性格がそう簡単に治るものではない。
そのため、登場したキャラクターたちは、これから日々の中で戦っていく必要はあるのだろうと思いますが、中年男が必至で頑張った範囲でのヒーローが確かに活躍した作品でした。
見終えると、がんばった志朗に心から称賛を送りたくなります。
知名度がそれほど高くないのが不思議なくらいの名作でした。おすすめです。