一人旅

マジック・イン・ムーンライトの一人旅のレビュー・感想・評価

4.0
ウディ・アレン監督作。

南フランスを舞台に、手品師と女霊能力者の恋の駆け引きを描いたロマンティックコメディ。

ウディ・アレン監督・脚本のロマコメの佳作で、今回のアレンは出演せず裏方に徹しています。主演はイギリス人のコリン・ファース、相手役はアメリカ人のエマ・ストーンをキャスティングしています。

1920年代の南フランスを舞台に、資産家の心を鷲掴みにしている自称霊能力者の女ソフィと、彼女のインチキを何とか暴こうと奮闘する高名な手品師スタンリーの出逢いと恋の駆け引きを描いたロマコメで、論理派&科学信奉者のスタンリーと彼の価値観を根本から揺るがしにかかる感性派ソフィの心理戦がユーモラスに活写されます。神を否定する=ダーウィン大好きな論理派のスタンリーですが(宗教嫌いで知られるウディ・アレン自身を反映させたキャラクターでもあります)、ソフィの超能力を目の当たりにすることでそれまでの態度がコロッと一変します。その大胆な手のひら返しが何ともユーモラスで、かと思ったら急に何かを悟ったかのようにソフィのインチキを確信し出す。ソフィとの出逢いをきっかけにした価値観の揺れ具合が可笑しいのです。

論理派VS感性派の価値観・人生観を賭けた心理戦を軽妙に描きつつ、やがてはウディ・アレンらしいロマンチックな恋の物語へと展開していきます。「愛は理屈にあらず」というオーソドックスなテーマながら、論理性と合理性で塗り固められた冷たい心の底から皮肉にも湧き出し始める“愛情というマジック”にかかっていくスタンリーの、今まで経験したことのない困惑と歓びに人生の希望が見えてきます。洒落た仕掛けが効果的なクライマックスはまさにウディ・アレン流のマジックです。

それにしてもコリン・ファースは堅物キャラが本当に良く似合いますし、対照的にエマ・ストーンは天真爛漫なキャラがイメージにぴったりです。そういった意味で本作はまさにベストなキャスティングであります。
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