となりのデルトロ

ルック・オブ・サイレンスのとなりのデルトロのレビュー・感想・評価

ルック・オブ・サイレンス(2014年製作の映画)
4.5
全くこいつはぶっ飛んだ映画だ
アディさんが1960年代の共産主義者大虐殺で自分の兄を殺した近所のおじいちゃんたちに、なぜ殺したのか聞いて行くとんでもない内容
その加害者(のはずなんだけど、普通のじーさんにしか見えないのが怖い)はさすがに気の毒そうにはするが、決して自分の非を認めて謝罪したりはしない
それどころかある有力者は住所をたずねてきて、脅しまでかけてくる
そんな加害者たちを感情を抑えてじっと見つめるアディさんの眼はとても印象的だ

この映画を見て大好きな漫画の
「世界はひとごろしの夢でできている」
という言葉を思い出した
加害者どもはなんとかの一つ覚えで
「過去は過去。いつまでもこだわっていても仕方ない」
「おまえは俺たちに復讐したいのか?同じことを繰り返すつもりなのか」
「あいつらは神を全然進行してなかった。殺されて当然だった」
「俺はただ命令に従っただけだ」
と繰り返す

そして優雅な老後を過ごしている
この世界はなんと加害者どもに都合よく作られていることか!
それでいて被害者は今も共産主義者の子孫として差別され(学校でそう教えられてる)貧しく暮らしている

あんだけアンチ共産主義の加害者たちが共産主義者に
極めてあいまいなイメージしか持っていなかったのも笑えない冗談
お互いに奥さんを交換してやりまくってるとか嘘丸出しのプロパガンダを丸ごと信じて、比較にならない残虐なことをしでかす
かれらにとってはそれが嘘か本当かなんてどうでもいい
向こうに非があると信じたらこちらの行為はすべて許される
この辺は今のネット社会も全く同じ

とにかくこの映画は「アクト~」並みの超弩級衝撃作
あちらより編集はさらに冴えており、最初から最後まで引き込まれる
映像の美しさも特筆もの
「人間」について知りたい人間全てが見るべき一本