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裁かれるは善人のみのyumaのレビュー・感想・評価

裁かれるは善人のみ(2014年製作の映画)
4.3
 改)ホッブズ原作既読。 「ヨブ記」、「ミヒャエルコールハースの運命」未読。
 2016年、鑑賞した中で1番良かった。ストーリー、カメラ、演者全てのレ ベルが高くまさに珠玉の作品と言っていいだろう。「父、帰る」から、作品ができる度に鑑賞してきたが、今最も実力がある監督として捉えて良いだろう。ある種古典を(とはいえ全て読んでいないが)ここまで現代風に、完璧に近く、映像作品に仕上げたその功績に、最大の賛辞が送られるべきである。作品内では腐敗したものとも映されるロシア正教会のいう神とはある種相対する自然の怪物レビヤタン。これは後半にクジラの亡骸として象徴されるように、何もせずただ佇むのみである。ヨブ、ミヒャエルコールハース、またはキルドーザー事件のマービン・ヒーメイヤーになぞらえられた主人公コーリャがその後どうなるかは語られないが、そのモデルから容易に想像することができる。そのストーリーから鑑賞後いたたまれない心の持ちようになるが、大衆娯楽映画のように消費され、忘却されるような作品ではない。何年経てど、その重苦しさと清々しいほどに佇むクジラの亡骸を忘れることはないだろう。とても、とても重厚な映画である。
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