くじらめくじら

マップ・トゥ・ザ・スターズのくじらめくじらのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

銃の誤発とか腹パンチとか、偶発的、必然的な暴力の出現によってストーリーが一気に流れ出す後半の展開がよかった。この映画での暴力は、それまで時間をかけて蓄積されてきた潜在的な怒りみたいなものが突如として物質界に現実化される契機としての機能を持つわけで、それはストーリー的には間違いなく現実の出来事として描かれている、それなのに、映像的にはすごくハイパーリアルというか、全てが去勢され記号と化したような画ばかりが並置されるので、そのアンバランスさというか、歪みみたいなものが面白かった。(人体発火とか笑ってしまった)ハリウッドに対する皮肉という物語も相まって、コズモポリスの発展系みたいな感じなのかなとか思った。

グリード観た時には、形のない怒りなるものが気色悪いモンスターとして可視化される面白さはあれ、親子の血の繋がりの中での怒りの伝播ということにはそこまで踏み込んでいない感じがしたけど、これはそこをメインに描いている気がした。
ワシコウスカは、過去の惨劇が再び繰り返されるという物語を誘発するトリガーでありながら、1人それを防ぐために尽力したけど、全身に刻まれた火傷の跡が象徴しているように、それは消えることのない呪いのようなものなのかもしれない。
抗いようのない決定論に支配されるというのはやっぱ何かしらの興奮をかき立てられるものがある…ごっこ遊びが時を経てごっこ遊びではない現実として再生されるってのは熱い。哀しみもあるけど。
勿論、そこから何かしらの意味合いで自由になることが問題になってくるわけだけど、それだとあのラストはよかったのか?よく分からない。
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