つぼかび

マップ・トゥ・ザ・スターズのつぼかびのレビュー・感想・評価

4.4
クローネンバーグ作品は『ヒストリー・オブ・バイオレンス』あたりから、「皮」の中身を剥き出しに描かなくなったけど、決して上品になったわけではなくて、表現の仕方が変わっただけ。火傷の跡に代表されるように、内に秘められたはずのグロテスクは容易に外へと浸食を開始する。

メカニックの描写も『ラビット』『クラッシュ』なんかではエンジン剥き出しのバイクとか激突してぐちゃぐちゃになった車だったけれど、『コズモポリス』も本作もスタイリッシュな超高級車。でも車の「中」でセックスはするし、ハンドルやらメーター類やらもエロティックに撮られている。

主人公の子役が住む家は大きな窓ガラスが特徴的な、「中身」が見える家で、部屋のあちこちに変な木は生えているわ「入口」は常にオープンだわ(ジュリアン・ムーアの家も「鍵」がかかっていないガバガバな入口=穴)で外見/中身、家族/他人、現実/虚構、生者/死者、火/水の境界は常に曖昧で交じり合う。そんなカオスの中に境界を引こうとする試みこそが結婚式ごっこという儀式なのだろうか。

去年の『アンダー・ザ・シルバー・レイク』然り、力のある監督が撮る、ハリウッドが舞台の映画はやっぱり面白いなあ。
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