エソラゴト

マップ・トゥ・ザ・スターズのエソラゴトのレビュー・感想・評価

-
落ち目のハリウッドセレブに舞い込んで来た少女は訳アリ家族の長女であり、周囲の人達の人生の歯車を徐々に狂わせていく人物だったー。


クローネンバーグ作品といえば、初期中期は現実と夢や幻覚、有機物と無機物の境界線をヌルヌルグチョグチョな独特のヴィジュアルによって曖昧化することで観る者の頭の中に不安と混乱を生じさせる作風、ここ近年の作品はそういった視覚効果は鳴りを潜めて暴力描写や性衝動等で生身の人間の痛みや深層心理に深く訴えかけ、精神的・情緒的に「くる」作風に変化してきている。

今作も現実と幻覚や妄想、正気と狂気、禁断の関係性などが入り乱れて目が離せない展開になっている。

原題は「星への地図」、星とはハリウッドスターの星、今作では光り輝く脂の乗ったスターではなく鈍く輝く陰りのある落ち目な元スター女優をジュリアン・ムーアが怪演。

クローネンバーグ監督をして「モンスターだ!」と言わせしめる程の存在感。因みにカンヌでは女優賞受賞、またゴールデングローブ賞ではコメディ/ミュージカル部門にもノミネート⁈…って予告編にもあるあの不謹慎な歓喜の舞?

劇中、ハリウッド俳優や関係者の実名がバンバン出てきて中には「それ大丈夫?」的なセリフもありハラハラするが、クローネンバーグ監督自身がハリウッドから適度な距離感を保っているからこそ出来る芸当なのかも。