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Mommy/マミーのrensaurusのレビュー・感想・評価

Mommy/マミー(2014年製作の映画)
4.3
母と息子の、お互いがいないと生きていけないのに、いても生きていけないような、愛憎渦巻く関係はなんなのだろう。

息子のスティーブが注意欠如、多動性障害、愛着障害、ADHDであることは、息子の母への感情表現を映画内で自然に見せるための口実のようなもので、どんな母子でもこの映画のような心象を持っている様に感じた。

生まれ持ったどうしようもない性質や、人生でどうしてもぶつかる何かしらの問題。煮詰まっている親子関係と互いの社会的立場。それらを乗り越えようともがいたり、人と出会って状況が変化していったり。愛しかないけど、愛があるからこそ苦しい。お互いがいるからこその現状であり、その原因を押し付け合うように憎んでしまう。

窮屈で美しい1:1の画面は、それらを端的に表しており、映像美はまるで愛情フィルターのように世界を美しく映してくれる。画面が横長に広がっていく演出は、苦しみから解放されるような気持ち良さが味わえて最高だった。しかしそれも、一時的ものや幻でしかなく、正方形に終着していく。母子の関係は真の意味で解放されることはないのだろう。

ラストの施設に入るシークエンスは、独り立ちのメタファーのように受け取った。社会に殴られ、母を求める息子と、それを見て離れ難く感じる母。ラストで母はふとした瞬間に悲しみに暮れ、息子は感謝や愛を述べた後、社会に駆け出していく。

作品然とした、味わい深い映画だった。
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