あちゃん

あの日の声を探してのあちゃんのレビュー・感想・評価

あの日の声を探して(2014年製作の映画)
3.8

チェチェン村はロシアに制圧され
ハジの両親は理由もなく殺される。
家に隠れていたハジはその様子を見て
恐怖のあまり声を失う。
赤ん坊の弟を他の家の前に置き去りにし
ハジは1人歩き続ける一一

親を殺されたチェチェン村のハジ
強制入隊させられたロシア軍のコーニャ
ハジを保護したEU人権委員会のキャロル
三者の視点から物語は進んでいく。



冒頭から目を疑うようなシーンから始まり
たった9歳の男の子の決断には
心が苦しくなるものの賢い子だと思ってしまった
失語症というよりも機を窺っていたようにも思える
上手く生き残るには賢さが必要で
この子は9歳ながらにそれを知っていた。

目で語り続けるハジの演技に惹き込まれる。
そして暗い音楽ばかり聞いていたハジが
1人の時にやって見せた誰にも内緒の特技は
必見です。あなたも上手じゃないの。



ハジがメインのお話のようにみえて
実はコーニャのストーリーの方が
ずっと重たく悲惨な内容になっている。

どんどんと崩壊していく自我、、
恐怖が慣れに、それを誇りだと思うようになり
殺すことが正義だと思いはじめる。
それがコーニャ側の生きる術だと言うには
あまりにも救いがなさすぎる

そして初めに繋がるラストの映像。
優しかった彼を思い出すと戦争というものの
本当の怖さを思い知る。


ずっと暗くて重たくてどんよりとした
冷たい空気感の作品です。
見終わったあとにじわじわと刺さってきます。

そしてもう一度最初から見たくなりました