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あの日の声を探してのmofaのネタバレレビュー・内容・結末

あの日の声を探して(2014年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

【無関心と、危うい平和への警告】

物語は、チェチェン。
両親を殺害された少年が、声を失い、幼い弟を見捨てるしかない境遇の中で、EU職員のキャロルと出会う。

 そして、もう一つの軸は、平凡なロシアの若者が、
ひょんなことから兵士となり、大きく、その心が変貌していく様を描く。

 物語は、冷静に、チェチェンの現実、チェチェンを取り巻く世界を捉え、
この世界がいかに歪んでいるかを、見せつける。

子供が声を失うほどの殺戮があっても、それは、遠くの出来事だと、
無関心な人々。

 ロシアの普通の若者が、殺戮を何とも思わない人間になっていく恐怖。
ちょっとしたタイミングで、簡単に、人を殺せる人間になってしまう。
「戦争」がひどく近いところに存在している。
その恐怖を、ひしひしと感じるのだ。

 この映画は、反戦映画ではなく、
遠く遠くへと、訴えかけているように思う。
 決して、無関心ではいられない。
一歩何かが崩れれば、この平和な日々も、一瞬で消え去る。
その危うさを、警告しているようにも思え、
無関心であることの傲慢さを、嘲笑っているようにも思える。

最後のシーン、少年と兵士が、交差する場面が出てくる。
正直、ココの部分は、先が読めて、驚きもしなかった。
 けれど、心が崩壊してしまった兵士も、そうなる前は、
確かに、9歳の少年と同じように純真な目をしていたはずで。
 同じだったのはずなのに、こんな風に、対峙してしまっている哀しさ。
そんな風に、人生を翻弄されている若者が、どれだけいるのだろう。

 どちらにも不幸は生まれている。
どちらにも、不幸しか生まれない。
 それに気付けと、訴えかける。

しかし、こういう作品に出会う度、
自分の無力さを、痛感する。
 結局、どんな風に感じても、私も「無関心」な人間の1人である。
その現実が、
厳しくて、虚しい。
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