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サンドラの週末のchsyのレビュー・感想・評価

サンドラの週末(2014年製作の映画)
4.5
自分ならどうするだろう。
夫の行動は無理強いなのか?
監督は夫の立場をフランスに根付く民主 主義、権利意識の象徴としたのではないか。彼は正しい。
最後まで自分の権利のために主張すべき だし、そこで負けても誰も同情しない。

サンドラもそのことは分かっているが、 実際に解雇を突きつけられるとたじろいでしまう。同僚も皆私がいなくても良いと思っているのでは・・・マイナス思考で体が動かない。
そこを救ってくれたのは夫だ。彼女がへ とへとなのにも関わらずあきらめるなと励ます。
それはダルデンヌ監督自身の声なんだろ うか。
長い不況と移民問題でEU内の失業率は 依然高い。
働く者に対して、それでもあきらめる な、という呼びかけ。

この監督は音楽をあまり使わないようで 特にバックミュージック等もないが、
今回は車のラジオから流れる設定で音楽 を使い、非常い良い効果を出していた。
観客はそこで初めてサンドラの笑顔を見 る。

最後は明るくさわやかな終わり方だっ た。
やるだけのことをやり、過半数には届か なかったが、自己犠牲を払っても自分と一緒に仕事がしたいと思ってくれる同僚がたくさんいたことを知り、生きる自信をつけて前へと歩き出す。
結局、金曜日のサンドラと月曜のサンド ラは置かれた状況は変わらないが、彼女の心は大きく成長した。
颯爽と歩き去るサンドラの後姿には、勇 気ある決断をしてくれた友に恥じない生き方をしよう、という決意が映し出されていた。
バチッと電源を落とすような終わり方だ が、そこには彼女を包んでいたさわやかな風が残される。

作品から欧州の民度の高さを感じた。
ワークシェアリングなど報道されている ことが実際の個別のシーンでどう影響するのか、一つの具体的ケースを見せてもらったと思う。
民主主義や社会の制度に完成形はない。
一人一人が強い意志を持って行動して自 分たちのものにして行かなければならない、という一つのケースを世界に発信し、問うた作品。
ただ、もっとずっと遅れた国では、逆に 人情がらみや村八分が怖くて、という逆行した見方になる恐れもあるかも。
日本人には学ぶ点の多い良い事例的映画 でもあると思う。
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