みーちゃん

雪の轍のみーちゃんのレビュー・感想・評価

雪の轍(2014年製作の映画)
4.1
3時間以上あるけど、繰り広げられる一言一句、集中力を切らすことなく観ることが出来た。

映像美も圧巻。美しくも荒涼とした、乾きながらもぬかるんだ、カッパドキアの風景と感情がシンクロする。野生の馬も印象的だった。

本作は、好きと言うのとは少し違うが、間違いなく、記憶に残る作品の一つになった。特に登場人物との距離感は、これまでに感じたことがない体験だ。

主要人物の誰にも感情移入できないし、好感も持てない。だけど、苦しいほど分かる。しかも、彼らに感じる嫌悪や恥ずかしい部分が、自分の中にも確実にある。これを観客に認めさせ、巻き込むために、3時間のプロセスが必要だったのだ、と思う。

終盤の、ニハルとイスマイルの事件はもの凄いインパクトだ。正しい、正しくない、ではなく、個人の価値観が崩れ落ちる瞬間を目撃した。

ラスト。冬の終わりと雪解けに掛けて、明るい連想をする考察を目にしたが、私は全く楽観視していない。人は、そんなに簡単じゃない。一周回って、結局は、何も変わらない気もするし、何かが変わるかもしれない。そんなところも、リアルだった。