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雪の轍のkaitoのレビュー・感想・評価

雪の轍(2014年製作の映画)
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人びとが一瞬留まっては通り過ぎていくという、ホテルのオーナーが主人公というのが良い。しかもこのホテルの名前が『オセロー』というのも絶妙に低俗感があってとっても象徴的。

序盤から中盤まで良いシーンが多くて、割れた車の窓越しの導師による謝罪シーンが壊れた関係をそのまま象徴していたり、その導師の薄っぺらい笑顔とかも100点だし、子役のイリヤス少年の目つきもまた100点。若い妻のニハルに電話かけるときに主人公の声が一段高くなる感じとかも良かったし、どこか日本的な恥と建前の文化がバシバシ感じられたのも面白かったし、馬周りのシーンとかは全部サイコーだった。

兄妹のなっがーい口喧嘩シーンはどこかドストエフスキーを連想させたし、雪が降り始めてからの室内での議論シーンもロシア文学っぽさがあった。ゲロシーンもギョッとさせられて良い。

しかし、まぁ、とにかく、映画を通してなんも成長していない、自分が可愛くてしょうがない、中二的初老の主人公視点によるキモいエンディングが本当に最悪だった。松尾社長感。っていうか登場人物全員が最悪。
特に何も期待せずにぼんやり観ていた映画でここまで拒否反応を起こしたことは驚きだった。

この前観たばかりの『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』の話が出てきた。

『悪にあらがわず、悪くないのに許しを請う』
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