Ryan

雪の轍のRyanのレビュー・感想・評価

雪の轍(2014年製作の映画)
3.9
「演じるとは正直たること」


ストーリー
トルコのカッパドキア。元舞台俳優のアイドゥンは、親から膨大な遺産を受け継ぎ、ホテルのオーナーとして悠々自適な生活を送っていた。しかし、家族や周囲の人間との関係は、彼の思うようにはいかず...。


主演 ハルク・ビルギナー
監督 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン


第67回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール受賞作品。

196分の長尺。
荘厳な雪景色の中、ただ喋り、愛し、赦しを乞う。

よくこの景色を撮れたな。
息を呑むほど美しく、我々の知らない雪景色の中、男と女をひたすらに静かに描く。
全体を通して不思議な感覚。
メリハリの緩急は凄まじく、終始ピリピリとした空気感は感じるがそれがどこから来るのかわからない。この映画の中で唯一派手なシーンが3つあるとするならば、それらは全て10分前後の尺。それ以外は恐ろしいほど静かで「雪の音すら聞こえてくるのではないか?」
と錯覚してしまうだろう。
それが苦手な方にすれば長く退屈に感じるはずだ。

人間関係なのか、コミュニケーションなのか、それとも行動するより思考なのか。
若い、老いた、批評、批判、これらをセリフの上では都合よく並び立てるがこの映画の真の目的は「愛を怠った人間たちの物語」だ。
いくら言葉では愛を伝え、慰め、罵倒し、貶されても平気な人々が望むものは最初から変わらず、ただ己の欺瞞によって全てが崩壊していく様は必見。

トルコの作品で、雪景色の中に佇む世界遺産カッパドキアの美しさに自然の尊厳を感じざるにはいられなかった。
いくらセリフがよくても、美しい風景が観客の心を持っていく事は間違いなし。
Ryan

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