井出

雪の轍の井出のネタバレレビュー・内容・結末

雪の轍(2014年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

この映画で言いたいことは、黙れ、口を開くなということだろう。口を開けば、人を不快にさせ、愚かさが露呈する。しっかり伝えれば理解されるか、それも難しい。だからと言って黙っていられるか、それも不可能なんだけど。その意味でリアルだ。
そしてとにかく、イライラする。人は主観がある限り、対立する。対立がなくったって大丈夫だと言っても、対立は不可避だと言う人と、意見は対立する。論理的であるほど、合理的であるほど、堂々巡り。むしろ非合理になってしまう逆説。重ねれば重ねるほど、イライラは増す。しかも、長い。そして、イライラすればするほど、セリフを追えば追うほど、監督の思うままになる。中身ではなく、そのことが、この映画のメッセージであるように思える。そして、私たちは、彼らと何ら違いはないと気づく。
この閉塞して、緊張した世界観を描くのに、冬のカッパドキアはこの上ないロケーションだと思う。嫌になるくらい、無情なほどに美しい。だからこそ、人間臭さも際立つ。
加えて、象徴的に用いられていたのは、ガラスである。ガラスは透明で純粋だが、固くて、石が当たれば、拳を当てれば、簡単に割れてしまう。汚れれば、光を通さない。薄いけど、窓を開ければ、外の寒さに気づく。それはまさに、人間的だ。窓も、眼鏡も、グラスも、非常に効果的だった。
井出

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