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アメリカン・スナイパーのひでGのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
4.1
観てたけど、書いてない、書けてない映画を再見シリーズ③

これは観た時のことを鮮明に覚えている。
2015年公開。20年ぐらい映画館から離れていた中、久しぶりに半ドンの土曜に観に行った。
映画館から離れていた時期は、クリント・イーストウッドが毎年のように名作を世に送っていた時期だったので、「グラントリノ」も「ミリオンダラー〜」もDVDで観ていた。

本作は、僕を映画館に戻してくれた、大きなきっかけになったの映画だ。

今回、改めて、この映画の、イーストウッド監督の凄さを感じた。

ある人物の人生をなぞる映画は、映画の素材の最も多いものであろうが、(伝記映画ととりあえず呼ぼう)、そんな星の数ほどある伝記映画の教科書みたいな、完成度の高い作だ。

アメリカではこの映画に対して、一部に「好戦的」と批判されていたらしいが、
どんな風に観たら、そう捉えられるのか?💦

僕もそうだが、映画を観る時に、勝手に「こうなるだろう、」と行先や行き方を決めてしまうところがある。

映画後半、帰還してから、PTSDに悩まされるカイルの描写がもっと畳み掛けるように出てきたら、印象も違ってきただろう。

でも、そのように、一方に一気に流れていかなところにこの映画の価値があると思う。
人生は地続きだから。

ひとりの人間がいかにして出来ていったかを両方面、ここでは戦場のカイルと、家庭でのカイルが並行して描かれていく。

完全に壊れたり、支配したりはしないが、
妻のタヤがカイルに、
「心が帰って来ていない。」と嘆くセリフからと分かるように、
彼の魂、脳の根幹は戦場に行ったままだったのだ。

帰還しても家に帰らずバーで飲むカイル。
それが彼の本当の声なのだろう。

彼の語る「祖国のために悪党を退治する」
生まれ持った、ゴリゴリのナショナリズム思想だが、
彼の無意識の奥の奥では、戦場で見てきた、やってきたことの整合性が説明つかなくなり、その岩盤が崩れているような気がした。

初見時は、戦場での伝説スナイパーシーンが
ややヒーロー的に思えたが
今回見直してみて、確かに緊迫感は半端ないけど、それ以上に無常感やこの行為(戦争)自体の無意味さ、非常さを感じた。

人生は地続きだということ、
戦争に勝者はいない、まして、ヒーローなんて存在しないことを、完璧な展開示してくれた、とてもクオリティの高い映画だと改めて思いました。
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