タンシロ

アメリカン・スナイパーのタンシロのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
3.7
イーストウッドが切り取る戦争の視点はとても人間性に響く。任務とはいえ、正義や使命というのは人ひとりの器で決して支え切れるものじゃない、だからこそPTSDに陥る人も多かったと思う。ただこの作品の主人公であるカイルのPTSDの引き金となるのは自分への危機ではなく、仲間の危機だったというのがとても印象的だった。自分がスナイパーとして仲間の危機を未然に防いできた結果があったからこそ、自分が任務につけないときの不安が、緊張やストレス、そして本国での日常生活との乖離として出ていたんだと思う。
戦地や現場の過酷さや緊張、厳しさは距離を隔てたアメリカ本土はもちろん、ほとんどの国では朝のニュースにチラッと映るくらいの関心ごとでしかない。同じ人間のはずなのにその現実離れした認識の違いに打ちひしがれる兵士たちも多いと聞く。
こういう現実があって、抱える闇があって、それと闘い続ける人たちがいるということを知るだけでも一見の価値がある作品だと思う。クリントイーストウッドはそんな鑑賞後にそうだよな、そうだよなと思いを巡らせるような映画をよく作る人だなと常々感じる。
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