あおや

アメリカン・スナイパーのあおやのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「アメリカン・スナイパー」
一見なんの変哲もないこのタイトルが、何が彼を"伝説"にし、あのような人間にしてしまったかをよく表しているように思います。

幼いころから聖書を愛読し、テキサス出身の元カウボーイもどきであることからも、彼が典型的なステレオタイプのアメリカンであることは明白です。マイケル・ムーア監督が「ボウリング・フォー・コロンバイン」で明らかにしたように(これがドキュメンタリーあるいは真実であるかはとにかくも)、アメリカ人は自身のたどってきた歴史から無意識な外敵への恐怖と自己防衛本能をもちあわせており、「羊ではなく番犬であれ」「誰が祖国を守るんだ」という言葉からはこの潜在意識が垣間見えます。

またスナイパーという役職は、戦場においてもっとも「死の感触がない」ボジションです。同じ殺害には変わりませんが、目標から遠い位置より人差し指一本で殺せるという手軽さは、彼が160人も殺したという事実に全く関与していないわけではないでしょう。事実、地上にいた仲間は次々と戦争に嫌気がさしていましたし、虐殺者がドリル(銃でもなくドリル!)で子どもを殺すシーンは本当に見ていられません。

また、除隊後クリス・カイルは自分と同じくPTSDに悩む元海兵への慈善活動に励んでいたようです。その事実を踏まえると、PTSDを患う仲間に殺されるという彼の最期はより重みをもってせまってきます。

クライマックス、砂嵐の中での戦闘はアカデミー賞音響編集部門受賞にふさわしいものでした。劇場に足を運んでよかった。
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