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アメリカン・スナイパーの映画を見る猫のレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
4.0
なぜ?と強烈な違和感を感じたシーンがあった。主人公が最後に、家族と戯れるありふれたシーンである。
なぜ、彼は銃をもっているんだろう...。
いや、別に意味なんてないでしょう。ただふざけてただけなんでしょうと言ってしまえばそれまでなのだけど、町山智浩の記事を読んで、謎が解けた気がした。
『で、原作の方を読むともっとすごく怖いことが書いてあって。心臓の鼓動とか脈拍、血圧がおかしくなっちゃうんですね。このクリス・カイルは。
で、おかしくなった時に銃に触ると止まるんですって。異常な脈拍が。
だから、いっつも銃を持っていて。寝る時も持っていて。肌身離さず持っている状態になるんですよ。家に帰って、アメリカでも』
そしてもう一つ気になったのが、おびただしい数の星条旗。それを全て日の丸に置き換えて考えてみたらいい。一体、今、この国で、世界で、どのようなことが起こっているのか。
演出に関しては、さすがイーストウッド。戦争映画が苦手でも、退屈することなく観れるだろう。印象的な砂嵐のシーン。そう、スナイパーの眼差しは、全てを俯瞰する神の眼差しに誰よりも近い。その眼が砂嵐に覆われ、何もうつさなくなったときが、彼にとっての戦争の終わりを意味していた。
アメリカにおける本作の受容のあり方は町山智浩の解説を読むとして、全くイーストウッドの映画を見ると、つくづく完璧だなと思ってしまう。いや、完璧というよりも〝優等生〟そんな言葉が似合う。
よく言えば、堅実で厚みのある渋い映画。悪く言えば、いつでも観客の解釈にその身を委ねてその身を守る〝無難な〟映画。
映画はその創世記から、戦争と蜜月を過ごしきたと誰かが言っていたが、まるでイーストウッドと映画の関係みたいだと思った。
@ 町山智浩 アメリカン・スナイパーを語る
http://miyearnzzlabo.com/archives/22576