モネ

アメリカン・スナイパーのモネのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
5.0
【ヒーロー信仰へのアンチテーゼ】

何年も前に鑑賞し、あまりにも感銘を受けた為、ずっと感想が書けないでいた作品です。

この映画の感想を書く時、自分は「シン・ゴジラ」という作品を思い出す。多分この2作は対極に位置するのではないかと思う。それは国民性によるものなのかもしれない。

アメリカの政治に対する知見がない為、この映画の政治や戦争に対する姿勢はよく分からない。(よく戦争讃美映画と批判されていますが…)
個人的には戦場で戦う兵士が、どのような過程で(そのメンタリティが)作り出されていくのかを描くことで、アメリカという国の集団心理や国民性にも切り込んだ映画なのではないかと思う。また、英雄視される1人の人間の、心の揺らぎを時系列ごとに見事に描いた作品であった。

ハリウッド映画、特にアメコミものは何かに秀でたヒーローが活躍する作品が多いように感じる。つまり「特別な人」にスポットを当てた物語である。
この作りとは対極にあると考えているのが冒頭に挙げたシン・ゴジラだ。この作品で1番印象に残ったのは、宣伝ポスターに俳優が1人も写っていない事だった。
団体戦でゴジラに立ち向かう日本政府には特定のヒーローが存在しないように描かれていると感じた。主人公たる長谷川博己さんも、そこまでフォーカスされない位、周りの人物が際立った作り。これは恐らくムラ社会に起する日本人の気質が反映されているのだと思う。

そういった点においても、やはり本作はアメリカという国のあり方を端的に描いている様に感じ、タイトルが「"アメリカン"スナイパー」であることにものすごいセンスを感じる。

ネタバレになる為詳細は書けないが、現実に起こったこのラストは、なんて皮肉なんだろうと感じた。だがしかし、この終わり方だからこそ、本作品は神が宿って産み出したのではないかと思うほどの傑作だと思うのだ。
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