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アメリカン・スナイパーのhilockのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
4.0
湾岸戦争で米国人を救った男の半生。英雄視されたスナイパー・・・という題材だけで、かなり懐疑的な部分を心に持ちながら鑑賞した。 予告で本編をノーカットで流している部分を見ても、正義という名目で殺傷を繰り返すことによる自責の念からの精神破綻という構図が浮かび上がる。
このような題材は映画界でも飽和状態であるため、本作は歴史の再認識、若い人々への記憶の継承という観点で映画化したのだろう!と安直にイーストウッドの構想を捉えていたが、いい意味で裏切る結果となった。
武器の進化、局地戦など戦争は時代的な変遷で大きく様変わりしてきている。そのような戦場で生き残るための殺人行為自体、正当化されるべきではないが、国への奉仕というパトリオット的意識と殺伐とした戦地の環境が宗教や正義を圧し包んでしまい、正常な原風景に戻ったときに己の大罪を認識し錯乱にも似た、自己逃避がおきるのである。(神経衰弱に陥り、戦場ですでに発症という状態もあるが、それは今回の批評からは除く。)しかし、彼は戦地に4度赴くにも関わらず、まったく変わらなかった(変化なしと言うのは少し違う。過剰なストレスがあったことは間違いない。後者へ)理由は、幼少期から備わっていた正義感、仲間(弟)を守るという行為である。父親から教わった狩りの手法、ライフルの意義など戦場の殺傷も、生きる術であり、それらがバイブルであったのは間違いない。この頃の幼少期の姿など自伝を読んでみないと真意はわからない。
また、狙撃手というポジションが一個隊を守るという重圧になり、神経衰弱の度合いをたかめていったとも言える。 これらの責任感が、過剰な緊張とストレス(PTSD)に繋がっていたことも大いにあり得る。 戦争の緊張感が実生活でも抜けきれないという話は他の作品にもあったが、そんな彼が正常でいられたのは、本土にも守るべき家族がいたからであろう。
共演は、シェナ・ミラー、ルーク・グライムス、ジェイク・マクドーマン★イーストウッドの方向性が全くわからなくなりました。
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