Melko

だれのものでもないチェレのMelkoのレビュー・感想・評価

だれのものでもないチェレ(1976年製作の映画)
3.7
「いいかい?この世にお前のものなんて何一つないんだ。この世でお前のものはたった一つだけ。その身体だよ」

「母さん、キリストに伝えて。私にも贈り物を届けて、って。誰も私にプレゼントをくれないの。父さん、神様、どうかあなたの国に私を迎え入れて」

なるほど…
コレはツラい……

フォローしてる方のレビューとあらすじ、何なら結末まで知ってから鑑賞。
怖いもの見たさというか、めちゃくちゃ覚悟して臨んだ。
覚悟していたよりは少しだけマシだった。というのは、チェレ自身は凄くしっかりしていて、自我もあるし物言いもハッキリしていて、なんなら自己主張もできる負けん気の強い子だったから。
生きるために考えることをやめ、ただただ従順に働き、文句を言わずに慎ましく暮らすのではなく、より良い環境を求めて拾われた家を脱走する強さがある。
だからこそ、報われなさすぎて、運がなさすぎて、おべっかも使えずお世辞も言えず生きるのが不器用すぎて、とにかく可哀想だった。

チェレを演じたジュジャ・ツィンコーツィは当時8-9歳。
冒頭から20分ぐらいまでは、ずーっと素っ裸…!!現代では到底映像化不可だろう。
里親やその子供達から受ける仕打ちは屈辱この上ないが、でもまだマイルドなほうだと思った。出稼ぎの孤児達が人間以下に扱われる様を、私は「ロミオの青い空」や「小公女」で見てきたから。アニメとはいえ、人間のイヤーな部分を毎週毎週繰り返し見せられるのはなかなかにハードだったけど、それでもやはり脳裏に焼き付いているのは、信頼できる友達や理解のある大人を得て、生きる目的を見失わずに力強く生き延びた孤児達の姿。

悲しいかな、チェレにはそれがほとんどと言って良いほどなかった。
思えば、冒頭から鳴っていた讃美歌のようなBGMは、チェレを迎えに来た天使だったのではないか。

なんとしても生き延びる狡猾さはなく、子供の無邪気さがまだまだ残っているチェレに、容赦なく冷たい大人達の平手打ちや暴言が飛ぶ。
頭から出血するほどぶたれる。

嘘をつけば良かったのに。
ゴマをすれば良かったのに。
それができない不器用で生き方が下手なチェレ。
(描写はないが)この世にいない母親に「ここにいるから迎えにきて」と言ったり、
唯一優しくしてくれた馬小屋のお爺も殺され、
トドメの一撃で養父からのあの一言。

この世に、もう誰も自分の味方はいない

事故か故意か、いずれにしても悲しい結末だけど、あんな幼さで生きることに絶望してしまったのなら、この先生きててもずっとこんな日々なんだろうと悲嘆したのなら…
燃やし尽くして良かったのかもしれない。
何人かは道連れにできたのかしら。ね、チェレ。

日本人は輪廻転生を信仰してる。私も信じてる。
誰よりも裕福で、光り輝く存在に生まれ変われますように。

自分の中ではまだこの作品のメッセージや想いを汲み取るまで至ってなくて、見て感じたことを書いた。

チェレ役のジュジャ、よく頑張った。
鬼気迫る養母からの仕打ちに、途中ホントに泣いてたと思う。
鬼が乗り移ったかのような養母(ヒステリーBBAとも言う)も凄かった。途中のアメ部分が気味悪いことこの上ない。
そして何より気味悪いのは、傍観・静観・無視する周りの大人。

生まれた子供に罪はなく、どの子が偉い、自分の子じゃないから家畜と同じ、なんてことは、絶対にないの。
Melko

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