たてぃ

だれのものでもないチェレのたてぃのレビュー・感想・評価

だれのものでもないチェレ(1976年製作の映画)
4.1
まさにハンガリー版「おしん」…救いようがない作品で娯楽性ゼロですが、「他人を侮辱したり虐めることがいかに酷いことか」を強く感じさせる上では観る価値は大いにあるかと思います。
また個人的な見解ですが、1人の少女を通じてハンガリーの黒歴史を表現していたのではないかと思いました(第一次世界大戦後の'20年からこの作品が公開された'76年の間)

1930年、ハンガリーの農村が舞台。第一次世界大戦の敗戦により国土の7割を失い高い賠償金を請求され、そして世界恐慌…国と国民は困窮…そんな時代に孤児院で育った少女チェレ。孤児院の維持すら困難な政府は「孤児を養子として受け入れた家族には給付金が出るよ」と発令。給付金欲しさと格安な労働力が得られる農家には一石二鳥とばかりに孤児を受け入れる状況。しかし孤児には人権などなく里親からは奴隷扱いという残酷な日々が待っており…

いきなり素っ裸の少女チェレが牛を追うシーンで度肝を抜かれます。そうなんです…衣服すら与えられなかったのです…(T_T)そして最後まで悲劇のオンパレードです…(T_T)

鑑賞後に様々なブログを拝見していくつかの発見が…
・原作「みなしご」は同じ時代に生き、自殺を図ろうとした少女から聞き取った話がベース
・チェレを演じた子役は7000人から選ばれた(あの演技力に納得)
・共産主義国の作品としては珍しく日本でも公開された

ハンガリーの黒歴史を描いたと思った点は…
・里親が2組登場。最初の里親がナチスドイツ、次の里親がソ連
・最初の里親には実子がいたがチェレは仲間ハズレ…まるで日本やイタリアはナチスと同盟関係なのにハンガリーは三国同盟には入れず。
・その里親から家出しいよいよ幸福が訪れるような予感を写す→ナチスから解放された戦後
・次の里親も極悪→ソ連
・そんな環境でも優しいおじいちゃんがいる。でもおじいちゃんは…→'56年のハンガリー動乱

当作品の舞台である1930年の三年後に「暗い日曜日」がリリースされて自殺者が続出したのもハンガリーでしたね…どんだけ暗黒だったんだ、ハンガリーは…(T_T)
たてぃ

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