【第66回カンヌ映画祭 批評家週間グランプリ】
『シシリアン・ゴースト・ストーリー』の監督の長編デビュー作。イタリア版アカデミー賞であるデヴィッド・デ・ドナテッロ賞では新人監督賞、撮影賞など4部門でノミネートされた。
DVDのパッケージにはアラン・ドロン主演『サムライ』にオマージュを捧げたというが観ていないのでどの辺がそうなのか分からない。
ストーリーとしては大きく言えばマフィアもので、まあ『レオン』みたいな話。ではあるんだが、クローズアップ、バストアップの長回しを効果的に用いて純アート映画的なアプローチで描いている。
寡黙な殺し屋が敵対するボスの妹を殺せず密かに匿うが、やがてそれはボスに知られるところとなってしまい…という物語。
ほとんどセリフもなく、おしゃべりなイメージのイタリア映画にしては異常なほど静か。
物語自体はどうでもよくて、監督のセンスや静かで残酷な美しさのある作品。この話ならホラーにでもサスペンスにでもアクションにでもできるのにそのどれでもない、この世の片隅で生まれた小さな愛の物語として丁寧に紡いでいく。
パッケージングが悪くて、これだとマフィア映画だと勘違いして当然。でもこれは純然たるアート映画。『シシリアン・ゴースト・ストーリー』も素晴らしかったし、この監督たちに今後も注目したい。