Ritz

365日のシンプルライフのRitzのレビュー・感想・評価

365日のシンプルライフ(2013年製作の映画)
4.2
この映画は僕にとってまさにタイムリーな題材だった。布団を敷くスペース以外は趣味で埋め尽くされた部屋で暮らすのは悪くない(むしろ天国)けど、ふとした拍子に自分は「それだけ」しか取り柄のない人間なんじゃないかと感じることが最近よくある。「モノ」に囲まれて生活していると、自分はいろいろ"もっている"と少し得意げな気持ちになり、部屋にいるときはこの上なく優越感に浸ることができるが、日常に足を踏み出せば、いつでもハッピーな気分という訳にはいかない。
無意識のうちに干渉する「もの」が多すぎて価値観は曖昧になっていくし、「ありふれた情報」の絶対量の多さに息がつまりそうだとも感じる。そして気づかぬ間に、みえない"何か"に自分の価値を量られ、その結果に一喜一憂する。でもそれは、もはや現代社会の性なのだから仕方がないことだ。と、自分に取り柄のないことを時代のせいにしようとしたが、部屋に帰りまた大学へ行く、そのサイクルのなかで、自分はただ現実から逃げているだけだと気付かされた。

そんなときにたまたま出会ったのがこの映画。
北欧、スウェーデン出身のペトリ監督が自身の体験をもとに製作したこの作品には、人生を自分らしく生きるためのヒントが詰め込まれていた。でもそれは簡単そうにみえても実はとてもむつかしいこと。モノに縛られない。何も飾らない素の自分に何があるのかを明確にする。そして素敵な仲間をもつ。
幸せは物の多さでは量れない。なら何が幸せをつくるのだろう。一度素っ裸になって自分のこころに問いかけてみようと思う。人の尺度で計られる幸せを信じるより、自分が本当にハッピーと感じる瞬間に出会えたなら…そんな日々を送れるように、今日から着飾った見栄は捨てよう。
シンプルに努力することができれば、その時からなにかが変わるかもしれないと思える作品でした。
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