ササキ・タカシ

DOCUMENTARY of AKB48 The time has come 少女たちは、今、その背中に何を想う?のササキ・タカシのレビュー・感想・評価

2.0
ずいぶんと寂しい。こんなに感傷的な雰囲気の映画になってしまったのは本作の内容が大島優子の卒業を中心としているからだけではないはずだ。ブレイク時の顔であった古参メンバーはわずかしか残っておらず今やそれぞれのチームの幹部となっていて、各々がどこか黄昏時を感じているような憂いがある。世間的にはまだ新人であるはずの島崎遥香ですら「私は未来の子たちの繋ぎになれたら」などということを言っているのだ。箱庭だった組織が巨大化し、箱庭ではいられなくなった喪失感が漂っている。

『DOCUMENTARY of AKB48』シリーズは、組織が急速に巨大化していく際に生じる歪なパワーとその渦中で喜び苦悩する構成員たちの映画だった。そのダイナミズムは間違いなく映画的で、しかもそれはフィクションでは極稀にしか見れない類のものだったのだ。本作は言ってみれば「家族や仲間を失い孤独になっていくドン・コルリオーネ」のような末期的なペーソスが画面から溢れていた。ポジティブなカタルシスを見いだせないまま終わってしまったのがとても辛い。

唯一の救いだったのが、中盤、劇場の座席の中でお互いのことを話している若い2人のメンバー(チーム4のメンバー?)のシーンだった。そこには思春期の少女特有の青春と未来と永遠と刹那を感じた気がする。頑張ってほしいと切に願った。
ササキ・タカシ

ササキ・タカシ