Edie

フレンチアルプスで起きたことのEdieのレビュー・感想・評価

5.0
ザスクエアが面白かったので、続けて鑑賞。

父、夫としての威厳/尊敬の喪失、からの家族丸ごと喪失(するのではという恐怖)笑笑、を阻止すべく、無かったことと言う暴挙にでて、当然ながら、事態は好転するどころかみるみる悪化、認めて謝るも地獄、そのままシラを切り続けるも地獄の袋小路にハマるパパとその家族の様子がリアルすぎて最高でした。

喧嘩してる最中の永遠にも思える時間と居心地の悪さを見事に表現していて、胸がギューっと苦しくなりながら同時に爆笑してました。

劇中は、今がチャンス!とりあえず早く認めて謝って!なんで謝らないない!え、まだしら切る⁈、いやいや、まずいまずい、もぉばか、、、とツッコミながら観てました笑笑

パパ涙腺大崩壊、からのやっぱりパパ/夫はカッコいい!を主人公も家族も満喫、の様子も良い(例えそれが妻の計らいでも)。パパ大崩壊の時は大爆笑でした。

女性のソーシャルプレッシャーはよく描かれますが、男性については余り描かれることも、語られることもないので、男性は常に強く、女性や子供を守る一家のリーダーであれ、といった、理想の夫、父親像とは真逆の行動を突発的に取ってしまい苦悩する男性を描いているのが新鮮でした。

敬愛するジョン•グレイの本に、男性は、強い父/夫であろうとするほど家庭内で孤立し幸福度が下がり、弱さを見せることで家庭内での幸福度が高まる、と書かれていたことを思い出しました。

恐らく主人公はそれまではプレッシャーを感じつつも、常に完璧な夫/父親でいることに成功していて、家族からは頼もしくカッコいいパパとして尊敬されていたので、醜態晒したことが唯ならぬ恐怖に変わったのかな、と。関係性によっては怖くてにげちゃった、ごめん、テヘペロ、で終わる話。

妻の怒りは、単に逃げた事というよりは、夫がシラを切るせいで、夫とも友人ともその時の妻側の心情などについて一切話す機会を奪われたアンフェアな状況への怒りで、すぐに話ができていれば、あのような喧嘩には発展しなかったろうに、一向にラチが開かないし、鳥肌立ったとヘラヘラしてるしで、友人の前で暴露する暴挙にでちゃった感じかな、と。

今回もかなり皮肉が効いた内容ながら、登場人物やそこで起こる状況を、ジャッジしたり、バカにするのではなく、人間の矛盾が引き起こす滑稽な様として淡々と映し出す監督のスタンスとスタイルは健在。ザスクエアより、今作の方がより温かな視線に感じました。

個人的に、文化的背景の違うパートナーとの生活を通して、男性のソーシャルプレッシャーについて考える機会が多かったことに加え、子供がいる状況での喧嘩、(自分へも相手にも)過剰な期待から起こる失望や怒り、根底に愛があるからこそ起こる気持ちのすれ違い、といった身近なトピックスだったのもあり、大好きな映画になりました。

最後のシーンは、冒頭と同じような危険な状況に面し、主人公の妻が夫に代わりリーダーシップを発揮し、いつも夫に押し付けていた家族を守る役割を担った、と受け取りました。(結果寒空の下長々歩くことになり、めでたしめでたし、で終わらせてくれません笑笑)

互いに醜態晒しながらトライアンドエラーの繰り返しでパートナーシップが育まれていく、としみじみしました。

パートナーと一緒にみて、色々話すのにピッタリの映画。
Edie

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