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フレンチアルプスで起きたことのcomaのレビュー・感想・評価

4.0
世界で最も意地の悪い監督と言われるリューベン・オストルンドの初期作。
ジュスティーヌ・トリエ監督「落下の解剖学」を「強烈な体験だった」と言わしめただけあって、かなり同系統の作品。
雪山が背景と言い、トリエ監督の方がかなり影響を受けたのかもしれない。

危険な状況下にあって、男=父親が妻子供を助けるべき者だ、の刷り込みがジェンダー平等が進んでいるスウェーデンまで浸透しているのはショックだし、何不自由ない快適なスキーリゾートで、瑣末な言い争いから家族が崩壊の危機に陥るのはわからないでもない。

中盤、友人カップルとのセラピー(赤髭のおやじいいキャラだ)や男の沽券挽回のチャンス到来など一件落着に思わせて、最後の最後、観客の価値観を試される展開が頭いい監督だな。

今作品はまだもやっとしたタッチでそれほど意地が悪いとは思えず、傍観者の掃除夫の存在とか、雪山リゾートから豪華客船へと舞台を変え、大きく振り切った「逆転のトライアングル」の前哨戦とも言える。
早くも最新作が楽しみです。
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