さとうきび

フレンチアルプスで起きたことのさとうきびのレビュー・感想・評価

3.4
ポスターに嘘しか書いてない! 僕が、君たちを守るから()幸せな4人家族を襲う突然の危機()
内容知らずにジャケットだけで見始めた人は困惑間違いなしな異色作。


ストーリー 4/10
ともすれば30分以内に収まる話を映画という長尺に引き伸ばしている印象。ハマらなければ睡眠導入剤になるくらいに起伏がなく、エンターテイメントとしてギリギリ成立している感じ。
ストーリーを楽しむというよりかは、映画全体に流れる雰囲気や演出の妙を味わうタイプなので、そこまで求めるのも酷だけど、やっぱりもう少しパリッとした物語性が欲しかった。

構成 7/10
すぐに雪崩が起きるので、本題に入るまでの流れはスムーズでいい。映画の大部分を占める夫婦の気まずいパートであるが、要所要所は面白いんだけど、少し冗長に感じた。
子供達にあまりスポットライトが当たらないので、単に可哀想な犠牲者にしか思えないのが残念。
とは言うものの、ピリピリした雰囲気を見せるだけのストーリーを、きちんと映画としてまとめ上げた構成力は見事。


演出 9/10
妻が唐突に雪崩について話し始めた時の「こいつマジか」っていう夫の表情。鏡越しに映る夫婦のギクシャクした空気。キャラの内面や感情の伝え方にかなりこだわった演出となっていて、見ている側にもきっちり伝わってくるところがすごい。
あとは、とにかく間の使い方が素人目にも上手いとわかるレベル。セリフが止まってお互い見つめ合うところとか、まさにドンピシャな間を取っていて、うわ、気まずっ……という気持ちでいっぱいにさせられる。


オリジナリティ 5/5
リゾートに出かけた4人家族が5日間ずっと気まずいだけの話という、他に類を見ないワンシチュエーションで押し通しているのは唯一無二。似たような映画が思いつかない。


ジャンル性 2/5
フィルマークスのジャンル表示では『スポーツ』とされているがそんなわけ無い。かといって、じゃあ何のジャンルと聞かれたら、うーん…大分シュールに寄ったコメディ? 家族の関係性を描いたドラマ? 明確なカテゴライズが出来ないので、中々人に勧めにくい映画。


映像・美術・音楽 5/5
骨に響くような環境音で表す静寂で没入感を与え、チャプターの切れ目で盛大に鳴り響くクラシックで現実に引き戻される。音楽の使い方のギャップが素敵。雪山らしく白を強調した絵が多いが、自然の風景と人工物とを同じフレームに収めて、情景からも不安な感じを煽ってくる。


キャスト 3/5
癖のない無難な夫婦役。脇を固める俳優たちの方がキャラ強めで、ちょっとだけアンバランスに感じた。子役2人は天使みたいに可愛い。演技もうまくて、やっぱ邦画に足りてないのは子役への演技指導だなぁと痛感。


個人的加点減点 −1
入り込めるまでがめっちゃしんどい。一度のめりこめれば一気見できるけど、配信サービスが充実している昨今において、出だし5分で視聴をやめることなんてざらにある。スロースタートなことが欠点として大きい。