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フレンチアルプスで起きたことのshxtpieのレビュー・感想・評価

4.0
いやー、これは抜群におもしろい! 絵画的、あるいはグルスキーのような写真的な映像のセンスとすぐれた編集、そして人間を客観的かつ深く見つめる洞察力に富んだ脚本が織りなす男女(ないし家族)のドラマ。ユーモラスで笑える、そして映像にあっと驚かされるアトラクション性もあるけれど、一方で真実味と迫真性があり、悲哀もある。自己保身と幼児退行に走る夫、それに呆れかえりつつも“空気を読まず”他人のまえでじぶんを正当化しようとする妻(だれもがこの映画を観て、この夫、ダメだな、とか言うと思うけど、この妻もなかなかだと思う)。オストルンド監督はどちらにも与することなく冷めた視点から男と女をカメラで追っている。その視点こそがステレオタイプな男性観/女性観にならないギリギリのラインを保っている。ドラマとしてもおもしろいが、やはり圧倒的なのは映像のセンス。オストルンドはもともとスキー・ヴィデオの監督だったとのことだけれど、非常にすぐれた美的センスの持ち主だと思います。ばっちりきまったミニマルな構図の連続です。冒頭の雪崩のシーンもすごいけど、映画の最後にも驚愕の仕掛けを取っておいてあるのだから……これは劇場で観るべき映画でしょう。なにはともあれ、いまデートで観るべき映画 No. 1 。
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