TaroYamada

ソウォン 願いのTaroYamadaのレビュー・感想・評価

ソウォン 願い(2013年製作の映画)
3.5
この題材を選び、世に問おうとした制作者の姿勢は凄いし、頭が下がる思いだ

事件を映画という形にする事は決して正しい事では無いのかも知れない
被害者の心情を慮ればそれは当然考えつく筈

性的暴行事件ではそれを事件化し、立件すると被害者は2度暴行を受けるという
1度目は実際の暴行、2度目は事件を再現し検証しなければならない捜査公判の場である
更に今作の映画化は3度目になる危険性があるのだ

制作者と事件の関係者の関わり方は言及はされていないが、どの様な形であれ誠意を持って、理解を求める姿勢で制作してるであろう事は想像に難くない

誰しもが見聞きする事で関わり合える、映画という総合芸術において、世間に事件を知らしめる責務を負って制作してるのであれば、その覚悟は評価に値するだろう

今作では、被害者を中心に、家族、友人、関係者にと、水面に水紋が広がる様に犯罪被害者とは当事者だけでなく、周辺の人々まで多く傷付けると思い知らされる

正直惨たらしい、目を背けたくなるシーンは殆ど無い
しかしながら周辺描写を繰り返す事で、悲惨な事件の全貌、それに遭った被害者、家族、友人、関係者の痛みが我が事の如く響いてくる

劇中、心打つシーンは人それぞれ違うと思う
私は被害者を守ろうとする、助けようとする、両親、友人、関係者の懸命な姿を見て、人事不省になりそうな位、号泣してしまった

自らが窮地に陥った時に、人に迷惑を掛けた時に、自分ではどうしようも無くて、でも周りの人々は気にするなと自分を守ろうと本当に良くしてくれる
それに報いる術を自分は今持たない、その無力感、そして何とかして当事者に手助けしようとする、そんな交流の描写を見ていたら、程度は違えど、我が事の様に思えて、自分の今までの過去を思い出して、いてもたってもいられなくなった

事件を起こす犯人も人間ながら、被害者を何とか助けようとする周りの人々もまた人間なのだ

演者では何より、被害者役のイ・レが素晴らしい
大人の役者でも役柄次第で心理的に引きずる事が有ると聞くが、彼女は被害者とほぼ変わらぬ8歳という年齢、いくら劇中の役柄とはいえ戸惑い、悩み、時には辛くなる事も有ったろうが、事件に有った辛さ、その後遺症に悩む日々、自分を思い、守り、傷付く家族や周囲の人々を逆に思いやる姿、本当に等身大に被害者が遭った事を演じる姿は年齢に関係無く俳優としての力量を感じる

本当に観ているだけで辛い作品である
観ていない人に勧めて良いものか躊躇する程に辛い話で、場合によってはトラウマが残る可能性も有るかも知れない
しかし、いろんな人に観て欲しい、相応の覚悟が必要だけど…