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ソウォン 願いのOASISのレビュー・感想・評価

ソウォン 願い(2013年製作の映画)
4.3
韓国で起こった幼女暴行事件を元に、被害者とその家族の戦いの日々を描いた映画。
監督は「王の男」のイ・ジュニク。

韓国映画にまた衝撃と感動の映画が産まれた。
劇場内では開始早々から鼻のすする音があちこちから聞こえ、それが終始鳴り止まず涙で溢れかえっている状態。
泣くもんかと思いつつも、事件以降距離が開き続けていた父に初めて娘がその手を触れるその瞬間にやられた。
それも、事件の記憶を呼び起こさせてしまった事によって娘に近づき難くなってしまった父が地道にその距離を埋めていく様子が丁寧に積み重ねられているからこそ。
泣こうと思えばいつでもどこでもできるほど涙腺決壊ポイントのオンパレードである。

娘が暴行を受けて病院に搬送され、あちこちに傷が残り人工肛門の装着をしたりと、目を背けそうになりそうな描写も上半身しか映さない事でソフトになっていたりするものの、台詞で間接的に惨状を想起させる辺りは上手い。
基本的にこの映画の台詞は胸を打つものが多く、被害者家族や少女から放たれる言葉の一つ一つがサラリとは流せない重みを持って襲いかかってくる。
「全世界の人が同じ目に会えばいいのに」というのも決して冗談半分で出てくる言葉では無いだろう。

事件の容疑者がこれまた韓国映画特有のジメジメとしたねちっこさ全開の糞親父で「泥酔してたから覚えていない」とすっとぼけたりして本当に腹立たしい。
「覚えてない」で済んだら警察はいらんでほんまに・・・。
彼に対して工場長が言い放った「飲酒運転は厳しく取り締まる癖に泥酔して事件を起こせば許されるのか!」という言葉は全世界に響き渡るべきである。

テーマ自体が犯人への復讐という猟奇的なものでは無く、あくまで事件の被害者の喪失と再生そして「願い」と「望み」に焦点を置いている為、怒りの刃の矛先が向かう場所が見当たらないのは辛い。
だが、その家族の周りに居る全ての人々が、被害者を笑顔にさせる為に全力で支えようという優しい視線が、我々がもしその立場に陥った時の模範的な回答に思えた。

特に工場長のなんとしても父親を援助しようとする姿は涙を誘う。
隠し切れない程の禿げ頭だけども、人は見た目で判断してはいけないのだ・・・。
僕も頭髪の危うい人には優しさ溢れる対応を心がけたいと思う。

ソル・ギョングやオム・ジウォンの熱演は言わずもがな、この難役を演じ切った子役の頑張りには賞賛をせざるを得ない。

@シネ・リーブル梅田
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