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ソウォン 願いのakiraのネタバレレビュー・内容・結末

ソウォン 願い(2013年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

・実在の幼児強姦事件
・発生から5年でつくっている(2008年の事件で2013年に映画化)
ということで、つくること自体がすごくチャレンジングだなと思う。

ただ、シビアな描写はかなり気をつかって省略している感がある。
もちろん胸糞悪くはなるのだけど、ストレートに恐怖感や嫌悪感を覚える描写は意外に少ない。
このあたりは、同じく実在の児童の性的虐待事件を描き、韓国で法改正のきっかけにもなった映画「トガニ」とは対象的。あちらは相当に怖かったし、気持ち悪かった。

下のレビューで、本作は「事件そのものより、事件後の家族や友のあり方を描いている」というものがあり、とても的確な言い方だなと思った。

たぶん本作のポイントは家族の再生を描くことで、シビアな描写で社会に問題提起をすることは、主目的じゃないんだろう。
ぼくは見る前から「発生からたった5年でつくるからには、被害者への精神的なダメージは覚悟の上で、社会に問題提起をしたい何かがあるはず」と勝手に身構え、かなりキツい描写も覚悟していた。だからこそ、実際の作品は(よくも悪くも)思ったほどではなかった。
もちろん起こった事実そのものは非常に残酷で重いものなんだけど、この映画自体には、あらすじやニュースを読んだとき以上のショックはない、というか。

それでは家族の再生を描く物語としてはどうかというと、申し訳ないけど定型的な展開が淡々と続いて、自分はあまり好きではなかった。
それから、「感動」の押しつけがすぎると感じる場面もところどころあった。

特に判決のシーン。

裁判の末、犯人は責任能力がないと判断され、量刑がとんでもなく軽いものになってしまう。
被害者の父は泣いて激昂、それを娘が泣いてとめる。他のみんなも、涙、涙。
被害者家族のやりきれない気持ちを映像で表したってことなんだろうけど、流れる音楽が異常にドラマッチで「感動げ」なのが、すごく違和感ある。
作り手としては、こんな場面でも父を引き止める娘、立派ですね、感動してください、というつもりなんだろうか。
起こっていることの悲惨さに対して、描き方がちぐはぐなように感じた。

何度も比較して申し訳ないが、「トガニ」はもっともっと重くて後味悪いが、同時にエンターテイメントとしても無類に「面白い」作品だった。
だからこそ、多くの人に長く見られる傑作になったし、実際に社会を動かして、法改正にまで届いた。

実在の事件を映画化するときには、普通の映画よりも作り手に求められるハードルが高いものだと思う。
作品が公開されれば、被害者・加害者・その周りの人たちの人生に、少なからず影響を与えるはずだ。彼らを再びスポットライトの下に引きずり出して、衆目にさらすわけだから。
発生から時間をおいていないならば尚のこと、その責任は大きいと思う。

だからこそ、「"今"この作品をつくる意義」がないといけないと思うのだ。
本作をつくった意義はなんかあるんだろうか。
akira

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