妻子ある映画監督との道ならぬ恋を断ち切れない女子大生の揺れる心を綴る恋愛日記。
大学生のへフォンは妻子ある映画監督・大学教授イ・ソンジュンとの不倫関係を清算しようと考えていた。しかし、母親がカナダに移住することになり別れの寂しさに落ち込んだ彼女は、ついイ監督に連絡してしまう。久々に会った二人が飲みに出掛けると、偶然クラスメートと鉢合わせてしまい、二人の秘密の関係がバレてしまう…。
主人公の揺れ動く恋心が、彼女の記す日記の形式で描かれる。人物の心理に寄り添いつつ、出来事を客観的に描写するホン・サンスの話術が絶品。
主人公が日記を綴っているときに、しばしば夢を見る。彼女の夢は彼女が目覚めているときの人生と比較されるが、その境界線がはっきりとしない。
モデルとしても活躍するチョン・ウンチェがヒロインを務め、男が放っておかない美人をリアルに演じる。言わば、無自覚な魔性の女である。
映画監督・大学教授イ・ソンジュン役に『教授と私、そして映画』のイ・ソンギュンが扮する。イ・ソンギュンの独特の威圧感のある声から『パラサイト／半地下の家族』のブルジョワ家族の主人だったことを思い出す。本作での情緒不安定で情け無い男はホン・サンス監督作に登場する男たちの中でも特筆すべきだ。
イ監督とヘウォンが南漢山城（ナマンサンソン）の守禦将台（スオジャンデ）で聞く音楽は、チョン・ヨンジン音楽監督が編曲したベートーベン交響曲７番第２楽章だそう。
ホン・サンス作品の常連、ユ・ジュンサンとイェ・ジウォンが『ハハハ』で演じたカップルとして登場。
ジェーン・バーキンが冒頭、本人役でカメオ出演しており(出ていると知らなかったので)驚いたが、ホン・サンス監督の大ファンの本人たっての希望だとのこと。
2023/07/02 DVD
