Kaoru

マフィアは夏にしか殺らないのKaoruのレビュー・感想・評価

4.8
70年代のイタリアマフィアがどんな感じだったかを手っ取り早く、そして面白く知れる作品でめっちゃオススメ!

イタリア作のマフィア映画ってのはね、政界や権力者までありとあらゆるところにマフィアの血が通いすぎてて登場人物があまりにも多すぎるのが良くない。近年のマフィア映画は観終わった後に、結局これは当時のイタリアの政界を知らないとついて行けないなぁで終わることも多し。

だけれどもこれは違う。すんごい見やすいし、とても知的にマフィアを皮肉ってるところが素晴らしいと思ったわ。

監督と主演をされているピフさん。なんでピフかっていうと1st nameがピエルフランチェスコさんだから略してピフ。MTVのVJ出身なので、イタリアでは有名人で、マフィアに関する書籍を執筆されておられたり、イタリアでは知らない人はいないほど有名な、ジョルダーナ監督の「ペッピーノの百歩」で助監督などもされてこられた方。容姿はとても頼りない感じ(役の先入観もかなり影響しているw)けれど、多才でこんなに面白くマフィアを伝えられるのは素晴らしいと思ったわ。

マフィアの大ボス、トト・リィナは実在の人物。定番の車のキーをひねった瞬間のボカーンでたくさんの反マフィアの有力者をあの世へ送り、捕まることなく何十年も逃げ回っていた史上最高の極悪ボス。もし、彼がいなかったとしたら出身地であるコルレオーネという地名をゴッドファーザーで使われることはなかったと思うし、殺された2人の判事の名前をパレルモ空港につけられることもなかっただろう。そう思うとどれだけ影響があった人物かがうかがえるわ。
この作品のすごさは、そんなすんごいマフィアの大ボスをちょぃ役に出して、ちょっと間抜けというかコミカルに映しているのょね。

マフィアの作品というのは、大概においてそのファミリーにフォーカスされがちなのだけれど、この作品は、マフィアと共に生きていた庶民の話というところがいいの。

実はマフィアってのは元々は自警団だったり、職業紹介所だったり、地主さん、時には神父さんと、いろんな役目を担っていたから、町の人たちはマフィア様々で、悪事に下を向いて生活していたところがあったのよね。なぜ、「マフィアは夏にしか殺らない」というタイトルなのかというと、オトナたちが子供に向かって、「大丈夫よ、今は冬だから殺されなんてしないわ」と諭すところからきている。それが70年代後半、80年代初頭あたりから、だんだん庶民もこのまま沈黙してはいけないと気づいて、声をあげてきたという歴史があるの。
その1番の転換期くらいのことを作品にパッキングした感じがとてもよかった。

最後のシーン、感動よね。
本当にパレルモ市内にはいたるところに、マフィアと戦ったあげく犠牲になかった人たちの石碑がたっくさんあるの。もしシチリア島へ行かれることがありましたならば、予習にこの作品を観られると街に奥行きが見えてこられるのではないかなぁと思います。
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