甘口パンダ

ぼくを探しにの甘口パンダのネタバレレビュー・内容・結末

ぼくを探しに(2013年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「主人公がマドレーヌを紅茶に浸してから口に入れた瞬間、その味が幼い頃の思い出を鮮明に呼び起こした」
(『失われた時を求めて』マルセル•プルースト)


マドレーヌ、紅茶、プルースト夫人•••
『失われた時を求めて』ですね🤩❤️

私は食い意地の張りようにかけては、かなりの自信があります。あの超絶長い小説については詳しくなくても、フランス菓子の本とかでちょくちょく触れられる、マドレーヌが有名になったきっかけの小説だ、ということについては覚えていました。

そこを端緒に、無意志的記憶、フロイト、抑圧と解離、ラカン、トラウマ、PTSD、フランス精神医学、心の間歇、、、。好奇心のままにネットサーフィンしていると、プルーストの著作や精神医学に明るければ、この映画がより楽しく鑑賞できそうだなと思いました。どう触れても知ったかぶりになるので、私はレビューに活かせませんが😌💦

自身の意志とは関係なく、昔の記憶が蘇るということは私にもあって、街中でaikoの「花火」が流れてきたら大学生の頃のマンションをブワーっと思い出して胸がキューっとなるし、映画で飛行機が墜落するシーンを見ると9.11を思い出して息苦しくなります。もう、私の意志は関係なく、毎回そうなるので、あぁこういうのが「無意志的回想」というのかな、と思ったりして(違ってたらごめんなさい)。

ポールの場合は、たぶんピアノがヤバかったはず。でも、さらに拗れて、プルースト夫人の紅茶とマドレーヌで画像再生のスイッチごと自分の内側から釣り上げられる展開でしたが。

『失われた時を求めて』、一回大昔に挫折したやつ。また読んでみたくなったんだけど、おおぅ、岩波文庫で全14巻。14••• 笑。



映画が終わって、印象的だった人やシーンは山のようにありますが、ひとつ、涙がでそうだったものを。

ポールの伯母さん2人。後半まで、視野の狭い自分勝手で滑稽なキャラクターなのかしらと思ってたけど、「あの子を返して」という途中で出てきた台詞がとても良くて、でもこの伯母さんたちには合わない気がして、ずっと気になりながら続きを見てました。結果的に、最後はこの台詞が彼女達への認識を変えました。全部見終わって初めて、やり方はよくなかったかもしれないけれど、伯母さん達も、彼女達なりのやり方で彼を愛して守ってたんだなと心にストンと落ちてきたひとことでした。


ポールの失声、両親の人生、ピアノに纏わる悲しい記憶。ラストに向けて、後半怒涛の展開で物語が動いて、おおいに気持ちを揺さぶられました。

そして、最後のシーンは後からじわじわと感動が込み上げてきました。ひとつの家族が前に進めた。余韻が凄かった。うん、とっても好きな映画でした。また観なくっちゃ。
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