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郊遊 ピクニックのeulogist2001のレビュー・感想・評価

郊遊 ピクニック(2013年製作の映画)
3.9
Blu-ray
素晴らしいカット割と美しい映像。カメラが固定された長回し。それもまだ続くのかというほどの長回しの多用(ラストで夫婦で壁画を眺めるシーンは20分以上!)。台詞も極端に削られている。一見、耽美的な芸術作品かと見間違える。

その映像の中に、人間立て看板を生業とする貧しい父親。小学1年くらいの息子と5歳程の娘。廃墟めいたマンションに3人で暮らす。

そして時間を前後して、謎の美人と妻、スーパーマーケットに勤める中年女性の3人が出てくる。
その3人と壁画の関係を含めて考えると同一人物なのか、それとも他人なのか。その解釈により、本作の理解は異なる気がする。

映像が重ねられていく毎に彼らの心理が多層的に立ち現れてくる。しかし最後まで、その心理の謎は明確に解き明かされる事なく、エンドロールに繋がる。

関係性の構造的な解釈はどうあれ、見つめる、しかも集中してたっぷりと時間を掛けて見つめる事の意味がよく分かる。誰かの感情や存在は頭で理解することではなく、深く共感することによって身体に染み込む事を・・。解釈は時に謎解きに終わり、そこに居る存在を深く感じる事には繋がらない。

その意味で本作は娯楽作品の対極にあり、むしろ作品の中で同じ感覚を生きて体感するものだ。
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