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郊遊 ピクニックのmareのレビュー・感想・評価

郊遊 ピクニック(2013年製作の映画)
4.5
これまでのミンリャン映画を通過していながらどの作品とも決定的に異なる。言葉や生活音そして僅かなノイズは巨大すぎる静寂に押し潰され、最後には光すらも差し込まない最果てへと導かれる。独自の表現スタイルを追求した彼の集大成にして誰もが成し得なかった到達点。映画の基本的要素である"音"をここまで徹底的に排したミニマルな映画はかつて観たことがない。特筆すべきは微動だにしない2人の超絶長回しで、完全なる無の時間が途方もないほどに映され、映像美を極めた儚い耽美さを象徴するものであると同時にプレッシャーが累積し恐怖を覚えた。沈黙というものがここまで脅威として迫ってくる体験がほかにあるのかと驚愕した。後にも先にもこういう形で相反する感情が押し寄せてくることはないだろう。普遍的な生活や愛を謳った物語でありながら、既成概念を拒絶するような前人未踏のアートにまで達したこの映画は重厚で立ち直れないほどの余韻を残す。青く切ないあの光と孤高の影が同時に存在する瞬間がとてつもなく美しい。
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