グラッデン

ブラック・スキャンダルのグラッデンのレビュー・感想・評価

ブラック・スキャンダル(2015年製作の映画)
3.8
ボストンを舞台に、地元育ちのギャングのボス・バルジャー(ジョニー・デップ)とFBI捜査官のコリノー(ジョエル・エドガートン)が、イタリア系マフィアに関する情報提供を目的に協定を結んだことで大きな闇を形成していく物語。

マフィア・ギャングの世界では、コミュニティや地縁的結合に寄与することを『ゴッドファーザー』や『グッドフェローズ』といった過去の名作から学んだこともあり、本作の繋がり方に「なるほど」と頷きながら見ておりました。そして、こうした「地縁的結合」が大きな闇の温床に繋がったと解釈できます。

マフィアとの抗争を続けるバルジャーとFBI捜査官として地元に凱旋したコノリーは、イタリア系マフィアを掃討することで得るメリットを感じ、ある種のビジネス的な取引として「協定」を結んでいたはずなのですが、コリノーはバルジャーと旧知の関係にある背景から「絆」(字幕に限らず、台詞上の表現も異なっていたかと思います)に置き換えて考えることで、躊躇いもなく関係性を強化していきました。

一方、バルジャーの最大の武器は、言葉のナイフを巧みに使った人との距離の置き方です。優しい言葉を並べながら真綿で首を締めるように相手を追いつめたかと思えば、鋭い言葉で一気に詰め寄ってから徐々に距離を離していくこともある。随所にジョニー・デップの好演が光りましたが、個人的には言葉責めの数々が一番ツボでした。

以上のように、対称的な立場にある2人の真逆の対人関係のスタンスが見てとれます。本編の途中から、この点を注視して見ておりましたが、非常に面白かったです。

ただし、作品全般については、もう少し、ゆったりとした物語回しのほうが良かったと思いました。消化すべきクロニクルが一定幅あったことは理解できますので、駆け足で物語を進める必要があることも理解できましたが、バルジャーに携わる人々が『Black Mass』(黒の集団)に徐々に染まっていく感覚を、このテンポでは、あまり共有できなかったかもしれない。バルジャー兄弟、コリノーともにキャラが立っていただけに、この点は「もったいない」と感じました。