笹井ヨシキ

レゴ(R)ニンジャゴー ザ・ムービーの笹井ヨシキのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

「レゴ・ムービー」シリーズ最新作ということで鑑賞して参りました。

(今年二回目の劇場完全貸し切り状態で寂しかったのですが)今作も面白かったです!

前二作から通底する「父と子」というテーマをより現代的に追及し、かつ前作「レゴ バットマン ザ・ムービー」では真正面から描けなかった「理想の正義」について堂々と描き、更に鋭いコメディセンスも健在で、安定感すら感じさせる作品でした!

今作はテレビアニメを原作としたスピンオフとなっているのですが、原作未見の自分でもちゃんと飲み込みやすいように世界観や登場人物の説明を過剰ともいえるアクションシーンで行う冒頭がまず良いですね。

いきなり実写パートからスタートする、という「レゴ®ムービー」の終盤の仕掛けを冒頭に持ってきて「現実に生きる子供たちのための映画」であることを示す大胆な演出から、ニンジャゴーシティを守るニンジャたちとガーマドンの戦いを圧巻のロボットアクションで見せ、そこから打って変わったダウナーなトーンでロイドの鬱屈した日常を見せる一連の手際が非常にスマートです。

ガーマドンの息子という理由で周囲から忌み嫌われているロイドが、その反抗心からヒーロー活動を行い、それでもどこかで父親の中にある息子への愛情を信じている複雑な内面を、カラッとしたコメディ描写の中に悲哀を込めて忍ばせているので、笑えるんだけど他人事ではない気がするんですよね。

ロイドの非常に好感の持てるところは、ガーマドンのせいで辛い日々を送り、父親不在によりキャッチボールも教えてもらえない現状にも関わらず、それでも父親を信じているところにあって、それは前二作の子供たちも共通していますよね。

「レゴ®ムービー」の「上にいるお方」にしても「レゴバットマン」のロビンにしても、父親がどんなに自分勝手で頑なで子供と接するのが下手でも、父親が自分を愛していて対話してくれることを信じ続けている存在であると描いていて、それは実際に子供との付き合い方に苦心惨憺しているお父さんの励みになると思います。

ロイドは悪の帝王と正義の味方の間に生まれた子供であり、そのどちらの素質もある存在なのですが、敵愾心から時に強硬な手段に出ることはあっても最後は対話の力を信じ、最終兵器とその中にいる父親に向けて話かけ続けるんですよね。

ガーマドンは悪人だしどうしようもない男ですが、そういう子供のイノセントな思いに大人は焦らず応えていくべきで、そんな男でもいつでも父親になれるんだと描くラストはとても清々しかったです。

ロイドとガーマドンの物語としては申し分なくて、あと音楽の使い方とか、ロイドに与えられた「緑の力」の秘密とか、吹き替え声優陣、特に相変わらず素晴らしい山寺宏一の演技とか、色々良いところもあるんですが、あえて言うならロイド以外の五人のニンジャたちはちょっと蛇足だったかなと思います。

水、火、氷、雷、土という五つの属性をロイドがまとめていくという展開のために必要だったのはわからないでもないんですが、正直五人も居て個々の成長を描けているとは言い難いところもあるし、ロボットに乗って活躍するところはあっても彼らが能動的に活躍するシーンはそんなになかった気がします。

ロイドの唯一の理解者だった彼らが最終兵器の件でロイドを責める展開も、五人もいるんだったら誰か一人でもロイドよりのキャラを設定しても良かったと思うし、正直いなくても結構成り立つような気がしなくもなかったです。

まあスピンオフ作品なので彼らは原作ファンへの目配せのために必要だったんだろうし、各々のキャラは立っているので好みの問題かもしれませんが。

近所の映画館では早々に公開が終わってしまい、一人で鑑賞したのは非常に寂しかったのですが、個人的には一本の映画としても、「レゴ ムービー」シリーズの流れとしても面白い作品なので、見逃した方は忘れずチェックしてほしい作品です!
笹井ヨシキ

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