KondoChihiro

アルゲリッチ 私こそ、音楽!のKondoChihiroのレビュー・感想・評価

3.6
2014/10/18文化村ルシネマ。
アルゲリッチ好き、ドキュメンタリーも好き、という安直な理由で観に行った映画。かけてる映画館の場所も場所だし、タイトルからしてもクラシック好きのおばさま達がターゲットの情熱大陸的ドキュメンタリーなんだろう…と思ってたら中身はちょっと違っていて、なんか不思議なあと味が残ってる。
というのも当然で、アルゲリッチは結婚と離婚を2回繰り返し、それぞれ父親の違う3人の娘を産んでおり、これはその末っ子の監督作であること。そして、原題は“bloody daughter”である、ということで、邦題のイメージとはそもそものアプローチが違って、主役は偉大なピアニストのマルタ・アルゲリッチではなく、“その娘である私”。だから違うのは当然といえば当然なんだけど、クラシックに興味がない層のひとでも観たらちょっとしたざらつきを心に抱えて帰れる作品なんじゃないかなと、少しもったいない気持ちに。
ただ、ドキュメンタリーとしてよく出来てるか?と言ったらNOなのかもしれない。複雑すぎる家庭環境・家族関係を、母を中心に愛をもってひもといていくのはとても面白いんだけども、そんな中にいる監督の“私”にはまだまだ葛藤があって、それを率直に見せていて、かなりパーソナルな作品でもあるんだろうことが伝わってくるから。勿論貴重なドキュメンタリーであり、いち芸術家の肖像を描いていることには違いないけれど。
最後の方、ピクニックでのペディキュアのシーンはとても美しくて、愛情が伝わってくる良いシーンだったな。ジェーン・バーキンとその家族が好きなひとにもちょっとおすすめしたい映画。
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