むさじー

アルゲリッチ 私こそ、音楽!のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

<娘が撮った完璧主義ピアニストの素顔>

映像は家庭用ビデオであったり、編集が未整理かなと思えたり、満足できるレベルではないが、演奏に関してはかなり気難しい面があったようで、芸術家の素顔が垣間見える点で貴重な記録映像である。
また、ステファニーとコヴァセヴィチ、アルゲリッチの関係は今も良好なようで、その絆の深さが映像に出ている。
演奏は一曲入魂、完全燃焼、演奏前は緊張から渋るが、演奏後は若返って戻ってくるという。
シューマンの音楽が最も好みのようで、「私の心の奥の感情とか魂に自然に触れてくる」というようなことを語っている。
アルゲリッチのピアノは、本能のおもむくまま自在に奔放に、しなやかで歯切れ良いリズム感をもち、豊かな情感とみずみずしさを湛え、生命力と歌に溢れている。
音楽を決して重々しいものにせず、その抒情性を豊かに表現し、まさに自然体で音楽に対している。
感覚的で、個性的なその表現には、他の誰でもない天才奏者のすごさのようなものがある。
そんな芸術家・アルゲリッチにしても、孫にピアノを教えるエンディングでは優しい祖母の顔になり、その落差が覗けるドキュメンタリーでもある。
むさじー

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