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いつかの、玄関たちと、のodyssのレビュー・感想・評価

いつかの、玄関たちと、(2014年製作の映画)
1.5
【不自然すぎる筋書き】

あんまり期待しないで見に行きましたが、期待しないで正解ですね。

この映画でいいのは、ヒロインの藤江れいなさんでしょう。ただし、原石としてはいい、という意味。この原石を監督は生かし切れていません。

藤江さん以外の出演者も、決して悪くはありません。だけど映画としては駄作にとどまっている。

では何が悪いのか。脚本と設定です。これがいかにも不自然すぎるのです。

詳しく書くとネタバレになるので断片的に書きますけど、ヒロインはなぜ姉の存在を知らされていなかったのか。おかしいでしょう。高校卒業間際で分別もそれなりにある彼女に、両親はいっさい何も知らせていなかった。それで或る日突然・・・って、そりゃないよ。この映画は家族讃美をテーマにしているようですけど、必要なことを娘に隠しておいて、それも隠し通すならいざしらず或る日突然他人事のように事実関係が娘に分かるような具合にしてしまう両親が、真に家族のことを考えているとはとても思われません。

次に、この映画はそういうわけでヒロインの目線で話が進むのですが、途中からなぜか姉の生涯が代わりに正面に出てきてしまう。ここ、作品の統一感をかなり損ねているんですが、制作側はそれに気づいていないみたいですね。

また、問題は、中間部で描かれることはあくまで姉の側の都合なのであって、妹の都合ではないのに、最後近くで姉は「私は自分の生き方を後悔していない」と妹に言い、なぜか妹がそれに納得してしまう、ということ。

妹は別に姉の生き方が気に入らないから家族に背を向けているんじゃないんですよ。今まで自分が何も知らされていなくて、いわば蚊帳の外だったのが、或る日突然・・・なので不信感を抱いているんです。その妹に自分の生き方がどうこう言うのは完全に勘違いです。つまり、脚本を作る側が勘違いしているのです。

そのほか、姉が家を出るのと母がヒロインを身ごもるのとがほぼ同時進行であるはずですが、この映画を見ていると同時進行は全然伝わってきません。そもそも、昔ならいざ知らず今どき18歳もの歳の差のある(しかも途中にひとりのきょうだいもいない)姉妹って、アリですかね。不自然すぎますよ。

また、姉の娘に自己主張があまりないのも不自然。ヒロインはこの事件でショックを受けて、すねるという形で自己主張している。姉の娘だって、今までと環境ががらりと変わったのだからそれなりに言いたいことがあるんじゃないかと思うのに、変におとなしい。

最後近くは登場人物が泣くシーンが目立つ。これも、作中人物が泣けば観客も泣くだろうという安っぽい計算のシロモノでしょう。役者は泣かずとも観客を泣かせるのが優れた映画なんですけどね。

というわけで、脚本や設定がきわめて不自然、視点の統一がない、ご都合主義が目立つ、など、駄作の名に恥じない(笑)映画だと言うしかありません。
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