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SHIFT 恋よりも強いミカタのemilyのレビュー・感想・評価

SHIFT 恋よりも強いミカタ(2013年製作の映画)
3.7
真っ赤な髪の毛が印象的なエステラの夢はシンガーソングライターで成功することだが、実際はコールセンター勤務。そこで意気投合した先輩オペレーターの男性トレバーと仕事以外でも一緒に過ごすようになる。二人の友情は男女間を超えた物に見えたが・・

 ジャケット写真そのままのスタイリッシュで、色彩のコントラストが見事であり、それとは対照的な二人の物語がほのぼのしてて心温まる。しょっぱなからエステラの服装に駄目だしするトレバー。しかしそれを素直に面と向かって言えるって逆に好感が持てる。ブースの仕切りは一面の青、自己紹介に自分の大事なものを言う、コールセンターならではの自由かつ個性豊かな感じの人々に囲まれ、二人は運命的な出会いをする。二人の過ごす時間に寄り添う色彩や幻想的な光が、より瑞々しく、何気ない会話が永遠には続かないことをわかってるからこそ、その一瞬一瞬の切り取りが儚く美しく、いとしいものに描写されている。

 幸せを切り取るように写真のシャッターを切り、寄り添うやさしいギターポップからきらびやかな二人の笑顔を包み込んでくれる。仕事では別チームの不正を暴くことになる二人、しかしそれは続いてきたわずかな幸せな時間の終わりへと導くきっかけともなる。二人の間にある絶対的友情は重なる部分だけを抱きしめておけばよかったがそうはいかない。女っぽくとも彼は男だし、彼女も女なのだ。男女間の友情は成立すると思いたい派だが、多くの場合どちらかに気持ちがある。超えられない壁は、一緒にいればいるほど、幸せを感じれば感じるほど、さみしさへと直結していくのだ。

 絶妙な心情、隙間になるメッセージの受信音、電話の着信、二人の時間はあらゆる方法で壊され、そうして現実に引き戻されるのだ。二人は恋人に離れない、だけど彼にとっても彼女は唯一無為の存在。二人のすれちがいの時間にエステラが弾き語りをする。まるで自分の心情を歌ってるような、メッセージがストレートに伝わる歌声が印象的だ。

 引きのカメラワークで見せる配置やスタイリッシュな風景や色彩に溶け込む人物像、遠すぎて表情が見えないぐらいがちょうどよい温度だ。すべて見ようとすればうまくいかない。しかし見方を変えれば二人は最強で永遠の親友になれる。ずっと一緒にいることなんてできないけど、遠く離れていても、長い間会わなくても、彼が彼女が元気で頑張ってることがお互いの強い味方となる。5年後の遠い未来なんて分からない。彼とも会ってないかもしれない。でもその存在、生きてるという事実が私を強くする。
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