TSUTAYA那覇新都心の覚醒

グッド・ライ いちばん優しい嘘のTSUTAYA那覇新都心の覚醒のレビュー・感想・評価

4.0
かきコメ@TSUTAYA那覇新都心店
【辛い過去を背負いながらも、互いに家族のことを思いやり、真摯に日々を生きていく姿に心を打たれました。
世界で起こっている出来事をテレビやニュースで目にしても、どこか他人事のように感じていたが、意識を変えさせられたーペンネーム:E.Aさん】



I want to live.
I don’t want to die.

「生きていることが当たり前」、そんな生活を送っている私にとって、物語前半で彼等が繰り返した上記2つのセンテンスはかなり衝撃的でした。

鑑賞中、ずっとドキュメンタリを見せられているような感覚だった理由を、最後の最後で知りました。

本作の主要人物を演じていた彼等は、かつて実際にスーダンで戦禍に巻き込まれ、難民として、あるいは少年兵として生きた経歴を持っているそうです。

彼等が演じたのは、「作り出されたキャラクタ」ではなく、「かつての自分達がなりえたキャラクタ」だったんですね。そりゃあキャラの説得力も増すだろうなあ…。

もちろん本作はフィクションではありますが、彼等が演じた物語に一抹の救いを見いだせたことが、とても嬉しくて、でもやっぱり悲しくて、エンドロールの間、ずっと涙が止まりませんでした。

生きる為にひたすら歩き続ける群衆の中から自然と湧き上がる歌は、いつ銃弾が飛び交う戦禍に巻き込まれるか分からない、けれど今を間違いなく生きている彼等の生への讃歌のようでした。

上流から流れてくる死体を掻き分けながら川の中を渡り、死を待つ人の横を通り過ぎる彼等の姿にも、生きたい!死にたくない!という強い生への欲を感じました。

その数年後の姿として描かれるアメリカでの彼等の生活がコミカルだったのが、微笑ましくも切なかった。

マクドナルドも電話も知らなかった彼等が、少しずつ異国の習慣に慣れ、居場所を見つけていく様がすごく優しくて、それだけに前半の非情さが際立って改めて胸に迫りました。

そして、主人公が最後に下した、優しくて悲しい決断。
罪のない嘘。

本作のハイライトとも言えるこのシーンが、大袈裟に盛り上げる演出じゃなくてよかった。
大切な人の背中をソッと押した彼の勇気ある決意と、最後に彼が見せてくれた穏やかな笑顔が救済でした。


こういう作品を観た後に考えるんですが、どうしてこの地上から、争いは無くならないんでしょうか。

私みたいに安穏とした生活を享受できる人間と、生きる為に銃を手にしなければいけない人間との違いって、何なんでしょう。

こういう問い掛けも、苦境の真っ只中にいる人からしたら、平和ボケした禅問答に聞こえるんだろうなあと思うと、ちょっと落ち込んだりもしますが。

時々は、こういう映画を見て、恵まれている自分の立ち位置を再確認することも大事じゃないかなって考えたりもします。