RitO

海街diaryのRitOのネタバレレビュー・内容・結末

海街diary(2015年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

鎌倉を舞台に作られた、彩度の低い画面は、何か劇的な事が起こるわけではない当たり前の日々を、前向きに生きていく四姉妹を象徴しているかのように感じた。
また、この「生きていく」というテーマを、いくつかの死を描くことで逆説的に浮かび上がらせているのも面白い。
自分がこの作品のもう一つのテーマだと考えるのは、「親と子は無関係」ということだ。すずの両親は不倫の間柄だったということに彼女は負い目を感じるが、他の三姉妹はそれを気にすることはなく、「ここにいていいんだよ」と言葉を投げかける。親の失敗の責任を子供が追う必要はない、というメッセージは、子供という立場にいる人にとって前向きなものに感じられるだろう。ただ、親子の愛を否定することはなく、お互いを想い合っている部分がある(完全な美談にはしない)としており、親子の形を絶妙なバランスで描いていると感じた。
四姉妹の関係性について、既存の三人のグループの中に、新しい一人が入ってきたとき、その一人は三人のバランスを取る役割になりそうだが、四女であるすずは、どちらかというと三女に近いポジションに落ち着いている。これは、すずが入る前の三人が擬似的な親子関係になっており、長女と次女のバランスを三女が取るという関係性が成立していたためかな?と思った。こういった関係性の造形は非常に納得感がある。
しかし、物語中盤で母親と対面することになるが、それが作品後半を引っ張っていくということはなく、あっさりと和解?してしまったり、長女以外とのコミュニケーションは殆ど描かれない(作中でも言及されるが)点は気になる。
加えて、親と子は無関係と言いながらも、すずの両親の不倫関係を、長女が言い訳的に誰も悪くないとしてしまう点も気になる。三姉妹のうち、誰か一人でも思うところがあるような描写があれば、それでもすずを家族として迎え入れることに重みが感じられたと思う(大叔母さんがそこに言及する場面はあるが)。
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